今月4日、ヨルダンでアラブ5カ国の外相と会談したブリンケン米国務長官。即時停戦を求めるアラブ側に対し、ブリンケン氏は「停戦」ではハマスが「再組織化」する可能性があり、人道物資搬入のため戦闘は「一時中断」にとどめるべきだとし、イスラエルのネタニヤフ首相も240人の人質全員をハマスが解放しない限り、戦闘中断も拒否する姿勢を示した。
そんな中、ガザ中部のマガジ難民キャンプでは、イスラエル軍の空爆により47人が死亡。同保健当局が5日に発表したところによれば、イスラエル軍の攻撃による死者は9770人で、その中には子供4800人も含まれているという。
まさに、終わりの見えない血で血を洗う戦闘が続く中、ハマスを全面的に支援し、武器弾薬を提供しているのが、レバノンの武装組織「ヒズボラ」だとされる。
「レバノンには、マロン派キリスト教徒、スンニ派イスラム教徒、シーア派イスラム教徒が混在していますが、イスラエルとの国境に近い南部を拠点として活動、かねてからハマスと深い関係にあるシーア派組織がヒズボラです。ヒズボラが発足したのはイスラエルがレバノンに侵攻した1982年。この時イランが膨大な資金と武器弾薬、そして1000人を超える自国の兵士を投入し、この組織の原型を作った。ハマスとの関係が出来たのは、それからおよそ10年後のことで、ハマスのメンバーがレバノン南部に強制追放された際、そこでヒズボラ兵士から爆破テロの指南を受けたことが始まりだとされています」(中東情勢に詳しいジャーナリスト)
そんなヒズボラがイスラエル軍による侵攻を受け、地下トンネルにおけるゲリラ作戦で迎撃、勝利したのは2006年のこと。実は、この地下トンネル構築に技術提供、物資協力したのが、誰あろう北朝鮮だったというのだ。
「北朝鮮には、有事の際に前線に兵士や兵器を送り込むため、南北境界線の地下に『南侵トンネル』を建設してきた実績があります。そして両者は80年代にイランの仲介で接触、以来、北朝鮮はヒズボラに対しトンネル技術を提供してきた。つまり、ヒズボラがイスラエルとのゲリラ戦で勝利した地下トンネルは、いわば“北朝鮮製”だったということになるわけです」(同)
2007年には、ヒズボラの指揮官100人が北朝鮮を訪問し、地下トンネル内での戦闘術などを学ぶ契約を締結。さらに2014年には、北朝鮮とヒズボラが1300万ドルでトンネル建設技術及び資材譲渡契約を結んだと伝えられている。
「むろん、北朝鮮は国連安保理の制裁を受ける身なので、大っぴらに送金することは出来ません。そのため、おそらくはレバノン、中国経由でマネーロンダリングし、残りはヒズボラが資金源とする麻薬によって支払うという形で、契約が成立していると言われています。そして、その地下トンネル技術がそのまま生かされたのが、現在ハマスが使用している『メトロ』と言われる巨大地下トンネルなんです」(同)
一部には、ハマスが使用する武器にも北朝鮮製のものが多く含まれているとの報道もある。それが事実であれば、北朝鮮は1万発の砲弾を供与したとされるロシアの民間軍事「ワグネル」だけでなく、ハマスにも軍事支援してきたことになるわけだ。武器密輸で外貨を稼ぐ北朝鮮。血なまぐさい戦いがあるところ北朝鮮の影あり、ということか…。
(灯倫太郎)