このところ、朝鮮半島でなんとも大人げない“ビラ戦争”が続いていた。
今年5月末、韓国の脱北者団体が北体制批判のビラをばら撒いた事に端を発し、それに激怒した北朝鮮もビラ撒きで報復することを6月に表明。北朝鮮の労働新聞は「一度やられてみなければ、どれだけ気分が悪いことなのか分からない」と報じ、平壌の出版印刷機関では1200万枚の糾弾ビラを印刷したという。そのビラの中身はというと…。
「最初に韓国側がばら撒いたビラに掲載されていたのは、艶系女優のボディと“コラージュ合成”された金ファミリーのあられもないフェイク画像。それに対抗して北朝鮮側が作ったビラには、文大統領が平壌冷麺を食べ、コップを持ち何かを飲んでいるような画像。さらに北朝鮮は、そのビラの山の上に、たばこの吸殻や灰などのごみを撒いた写真を公開しました。一見すると、両者ともに何の煽りにすらなっていない意味不明な写真合戦に思えますが、朝鮮文化や儒教文化では、目上の人の前でタバコを吸うのはタブーとされており、彼らにとってはああいった写真を公開すること自体が最大級の侮辱にあたるのでしょう」(政治記者)
そんな矢先の6月23日、北朝鮮側は急遽、韓国へのビラ撒き報復を取りやめると発表した。突然の発表にネット上では「多分、文在寅が北朝鮮に大金を送ったのだろう」「米空母が近づいてきて北がビビったのか」といった様々な憶測が飛び交っているが、いまだその真偽は不明である。
しかし、前述の政治記者は、北朝鮮への警戒を緩めるべきではないと、強く訴える。
「北朝鮮は、1200万枚ものビラを職員たちがせっせと用意している様子を写真で公開し、韓国を牽制しようとしましたが、実はその写真には写ってはいけないものが写っていました。それは職員たちが一様にマスクを着用している姿。彼らはビラを散布する際に、それを入れるビニール袋に毒物を仕込んでいたのではないか、という噂があるのです。冷静に考えてみれば、韓国が厳しい情報統制下の北朝鮮にビラを撒くのは効果的かもしれませんが、逆に北朝鮮が韓国に撒くのは全く意味がありません。なぜなら韓国はインターネット大国だからです。北朝鮮が韓国に対して本気でプロパガンダを行いたいのなら、ユーチューブに動画を上げる方がよっぽど効果的。彼らはそのことを知った上で、あえてビラ撒きというローテクな手法をとろうとしたわけです」
今回は何らかの理由で、ビラ撒き戦争は一時休戦となったが、朝鮮半島の緊張は依然として高まったままだ。近い将来、再び同様の危機はやってくるだろうし、“毒入りビラ”の存在が事実なら、日本に飛んでくるのも時間の問題かもしれない。
(橋爪けいすけ)