PLイズムと気配り。中日・立浪和義監督が開幕投手を大野雄大に託したことを明かしたのは、3月1日だった。ひと足先に対戦チームの巨人がインターネット上で「菅野智之を」と発表したからで、「だったら、ウチも」となったのだ。
「淡々とした口調で教えてくれました。予想通りでしたが」(名古屋在住記者)
大野自身も認めていたが、昨年11月の秋季キャンプ中に立浪監督と開幕投手の話をしていたそうだ。
「昨季のチームの勝ち頭は柳裕也。大野は22試合に先発登板しましたが、負け数が勝利数を上回ってしまい、不本意なシーズンとなってしまいました。仮に柳が開幕投手に選ばれたとしても、みんな納得したでしょう」(同)
大野を開幕投手に決めたのは、立浪監督だ。ある意味で、立浪監督らしい選択とも言える。
「序列を大切にするタイプです。上下関係の厳しいPL学園の出身らしいというか」(ベテラン記者)
しかし、チーム関係者によれば、立浪監督は大野に大任を伝えた後、柳をコッソリと呼び出していたそうだ。
「正直に開幕投手を大野に決めたことを打ち明け、同時に柳への信頼、期待感も伝えたといいます」(関係者)
指揮官としての気配りだろう。立浪監督も現役晩年はスタメンを外され、代打に徹してきた。年齢的な衰えを自覚しつつも、ベンチスタートとなった理由を監督、コーチから教えてもらえず、精神的に苦しんだときもあったそうだ。
「大野には投手陣をこれからも牽引してもらいたいとし、同時に柳のプライドも考えたうえでの行動でしょう」(同)
立浪監督の母校・PL学園には、のちにプロ野球界で活躍する猛者たちをたくさん輩出した。しかし、猛者の活躍だけで勝ち上がっていったのではない。選手個々を底上げしていき、チーム全体で戦うスタイルになった。
中日は目立った戦力補強をしていない。巨人との開幕カードを勝ち越すには、立浪監督の気配りがポイントとなりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)