中日・大野雄大の去就問題は残留宣言で終了とはいかないようだ。
完投試合数「10」、その無尽蔵のスタミナで、今季の沢村賞に輝いた大野の残留は、中日にとって、何よりの戦力補強ともなった。正式な手続きはまだだが、「3年総額10億円」の大型契約ですでに合意しているという。しかし、米メディアはそうは見ていない。早ければ来年オフ、遅くても22年までには「もうひと波乱がある」と見ていた。
「米スポーツサイトのMLBトレードルーモアズ、米放送局MLBネットワークが大野の活躍を紹介しています。スゴイ投手なので、中日が手放したくないとする気持ちもわかると告げていました」(米国人ライター)
大野は故障で投げられなかった大学4年時に1位指名してくれた恩義を今も忘れていないという。残留宣言した後であり、それでも、「このままでは終わらない」と予想される理由は、中日球団の体質にあった。
「2003年に大塚晶文投手のポスティングを認めており、11年も左腕チェン・ウェインのメジャー志望を汲んで、自由契約にした経緯があるからです」(前出・米国人ライター)
大野は来季ではなく、22年に海外FA権を取得する。中日は来季、球団創設85年という節目を迎え、メモリアルイヤーのリーグ優勝、日本一に貢献して米球界挑戦となればカッコイイのだが、MLBネットワークは「22年があやしい」と読んでいる。
「07年、福留孝介が海外FA権を行使した際、中日は強く引き止めませんでした。大塚は近鉄に在籍していた02年、米球団との交渉に失敗し、03年だけ中日に所属しました。チェンはもともとメジャー志向が強く、それをわかっていて獲得に動いた経緯があります。海外移籍に寛大なのではなく、選手個人がFA権を行使したときは仕方ないというスタイル」(米特派記者)
昨年オフ、大野が複数年契約を蹴ったことを指して、こんな指摘も聞かれた。「大野個人はチームに残りたかったが、納得する年俸額を提示してもらえなかった」と。私生活ではクロムハーツのアクセサリーやベントレーの新型車を愛しており、ホンモノ思考が強いという。中日への恩義は忘れていないが、野球でも“ホンモノ”を目指すかもしれない。
中日球団と海外FAについてどんな約束を交わしたのか、もう一度調べてみる必要がありそうだ。
(スポーツライター・飯山満)