「与死球ゼロ」の沢村賞投手はなぜぶつけた?佐藤輝明が変えた阪神の苦手意識

 ルーキー・佐藤輝明選手が“逃げない姿勢”で、苦手克服の道が見えてきた。

 2月27日の練習試合、対戦相手の中日の先発は沢村賞投手・大野雄大。3番で出場した佐藤の第一打席は右肩口を直撃するデッドボールだった。

「佐藤はのけ反って逃げませんでした。ぶつけられた瞬間、ちょっと阪神ベンチの雰囲気がざわつきました」(スポーツ紙記者)

 その初回の攻撃で、阪神打線は大野から3点を挙げた。大野との対戦成績だが、昨季は5試合で防御率1.51。完全な苦手投手の一人である。

「その後の佐藤の走塁、守備を見ている限り、死球の影響は感じられませんでした」(前出・スポーツ紙記者)

 もちろん、故意にぶつけたものではない。しかし、佐藤の加わった新しいトラ打線に中日バッテリーが警戒心を抱いていたのは間違いないようだ。

「試合前、大野と捕手の桂依央利がミーティングをしています」(関係者)

 先発投手と捕手が試合前に打ち合わせをするのはよく見る光景だ。そこでは大野が「ストレート一本で行こう」と提案し、桂がそれに頷いたという。

 大型新人に対し、ベテラン投手が名刺代わりに得意球を投げ、レベルの差を知らしめるのも珍しい話ではない。その反対に、勝負はペナントレース本番まで取っておくため、打たせてやるケースもあるそうだ。

 大野がストレート一本に決めた理由がどちらなのかはわからないが、佐藤と対戦しているうちに、力が入りすぎてしまったというのが中日サイドの見方だ。

「大野は昨季、与死球ゼロ。内角を厳しく攻めて失敗したこともありません」(前出・関係者)

 佐藤には沢村賞投手も熱くさせるものがあるようだ。

「佐藤の今のスイング軌道だと、外角の変化球に苦しむのではないかという見方もされています。今の活躍がホンモノなのかどうかは、やはりペナントレースが始まってみないとわかりません」(ベテラン記者)

 だが、阪神打線が苦手・大野からいきなり3点を挙げたことで“苦手意識”も薄らいできた。過去、新人一人の加入でチーム全体が変わった話も珍しくない。やはり佐藤は優勝のキーマンになりそうだ。

(スポーツライター・飯山満)

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