27年開業は絶望的、「リニア新幹線」はもはやJR東海のお荷物状態!?

 JR東海はリニア中央新幹線について、最新型車両を使った一般向け体験乗車を今年春に山梨県の実験線で開催することを発表。27年開業を目指して建設工事を進めているが……。

「俺だって、つらいんだよ…」

 JR東海の金子慎社長の、そんな心の叫びが聞こえてきそうな場面があった。去る12月21日、斉藤鉄夫・国交大臣が金子社長を呼び出して、リニア新幹線に反対する住民に「真摯な対応」を継続するよう嗜めた時だ。

 反対する住民とはもちろん、静岡県の川勝平太知事が旗振りをする反対派住民らのことで、こちらの対応は当然、一筋縄ではない。「真摯な対応」が通じないから金子社長も困っているわけで、さらには社長を呼び出すなどかなり異例のことだ。

「例えば3.11の時に当時の菅直人首相が東京電力の清水正孝社長を官邸に呼びつけたということがありましたが、このように国務大臣が民間企業の社長を呼び出すというのはよほどの不祥事・問題があった時くらいで、あまり類例はないですね」(全国紙記者)

 しかもJR東海に大きな咎があるとは思えないのだから、金子社長の心中察するに余りある。

「逆に言えば、国交省もそれだけ弱りきっているということです。直前の19日には、川勝知事らが問題視する『大井川の水問題』については国の有識者会議が中間報告を行い、『影響は極めて小さい』としたばかりですからね。だから国交省としてはハッパをかけたとも言えます」(同)

 国交省としては、「官」が出ていくべきではないという認識で、JR東海としては天の声の「裁定」が欲しいところで、責任の押し付け合いということなのだろうが、正直、そんな事を言っている余裕は無いのが現実だ。10月、11月と現場では立て続けに工事現場では事故が発生し、10月の事故に至っては、死者も出ているからだ。工期が迫って安全管理がズサンになっているのではないかとう批判も出て、現場は汲々なのだ。

 加えて、果たしてあらゆる困難を押しのけてまでリニアを完遂するメリットが果たしてJR東海にあるのだろうかという、根本的な問題が浮上しつつある。つまりは、投じた金の元が取れるかという問題だ。

「14年に認可が下りた段階で必要とされる総工費は5兆5000億円とされていました。JR東海では、そのうち3兆円は政府借入で賄い、残りの2兆5000億円は事業収入で埋めるという計画を立てていましたが、この間、コロナで収入はガタ落ちし、民営化以来、初の赤字という苦杯を舐めている最中です。いつかコロナ禍は去っても、リモートワークの普及に伴って出張廃止を打ち出す企業も多く、東海道新幹線の大半であった法人関連収入は元に戻ることはありません」(同)

 だから収入の右肩下りが必然で、リニアに回る金は無いと考えるのが普通なはず。ところが、後戻りが出来ないのもまた現実。そんな折、イチイチ大臣に呼び出しを食らったのでは堪らないというのが普通の感情だろう。

 既に当初目標だった27年開業はおそらく2万%不可能で、JR東海は今年4月にはさらに追加の工費1兆5000億円を積み増した。こちらは借入金や社債の発行で賄うと見られるが、リニア計画は命をかけて完遂したとしてもその見返りは乏しいという局面にまで至って、関係者が誰も得をしないというのがさらに悲しさを増す状態になっている。

(猫間滋)

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