東京—大阪間がなんと14分!リニアの5倍速い「真空チューブ列車」はなぜ開発中止になったのか

 現在、工事が進められているリニア中央新幹線は、静岡県の川勝平太知事が県内の工事着工を認めず、予定されていた品川—名古屋の27年開業は極めて難しい状況となっている。

 だが、全線開通した場合、品川—大阪の所要時間は現在の新幹線のぞみ号より1時間10分も短い67分。最高速度は時速500キロというまさに次世代の「夢の超特急」だ。

 だが、このリニアよりさらに速い超高速鉄道の構想があったことをご存知だろうか。

 それは「超音速滑走体」と呼ばれ、真空状態のチューブの中に列車を走らせるというもの。戦時中に活躍した四式重爆撃機の開発者として知られる名城大学の小沢久之丞教授を中心に研究が進められ、1970年には長さ1.6キロのチューブ内をわずか3秒で走破するという驚愕の記録を残している。最高速度はなんと時速2500キロ。リニアの実に5倍だ。

 当然ながら未来の乗り物として期待されたが、実は致命的な欠点が明らかになったという。

「発車時に30Gというあまりに強烈な重力加速度がかかってしまうのです。ちなみにF1カーで最大5G、宇宙ロケットの発射時でさえ6Gと言われています。30Gは人間であればすぐさま内臓破裂を起こしてしまうほどの加速度です。しかも、この時は停止装置の故障で脱線し、実験車両は木っ端微塵となり、『乗客』のミドリガメが死んでしまいました」(鉄道ジャーナリスト)

 しかも、燃料に取り扱いが難しいニトログリセリンを使用するなど多くの問題を抱えており、結局、実用化には至らなかった。

 ただし、この真空チューブ列車の構想自体は高く評価されており、今世紀に入って海外で開発が本格化している。2013年にはあのイーロン・マスクが「ハイパーループ」という新しい真空チューブ列車構想を発表した。ただ、莫大な開発費や採算性、安全性などさまざまな問題を抱えていることから旅客用の開発は断念したと報道された。

「現在は米企業の2社で開発競争が行われています。旅客輸送も技術革新によって今後クリアできる可能性は高いと言われていますね」(前出・ジャーナリスト)

 リニアの1世代先を進む、真空チューブ列車の今後に注目だ。

*画像は交通科学博物館(現在は閉館)に展示されていた真空チューブ列車「超音速滑走体」の模型

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