万引きGメン、流木拾い…M-1ファイナリストたちの衝撃バイト歴

 優勝せずとも夢をつかめる―それがM-1ドリームだ。

 昨年は錦鯉が最年長で王者に輝いた。だが敗れても強烈なインパクトを残せば人生を変えられる。過去にも、ファイナリストになった翌年以降、仕事が途絶えない芸人がいる。それも、食えない時代にやっていたアルバイトと芸風にギャップがある芸人ほど売れている。代表格は、メイプル超合金のカズレーザーだ。

 メイプルは15年のファイナリスト。カズは現在フジテレビ系朝の情報生番組「めざまし8」のキャスターとコメンテーターを務めるほか、クイズ番組の常連。インテリ芸人枠のトップランナーだ。

 かつては、同志社大学商学部卒という高学歴を生かして家庭教師のアルバイトをしていた。ところが、芸人時代のバイトは“流木拾い”。世間に知られていない謎バイトで、河原で流木を拾い、ある芸術家へ届けて認められると謝礼として5000円をもらえた。NGなら0円と、リスクも大きい。以前、番組企画でお笑いコンビ・バイきんぐがこのバイトに挑戦して、8000円を手にしている。

 狂言風漫才で19年のファイナリストになったのは、すゑひろがりず。紋付袴に小鼓、扇を駆使する漫才。何でも和風言葉に変換する芸風が受け入れられ、今なおテレビ番組からオファーが絶えない。南條庄助は決勝戦のギリギリまで「サンケイスポーツ」編集局運動部でバイトしていた。対して三島達矢はかつて、万引きGメンだった。

 現在はタレ目のかわいいおじさんだが、20代前半の三島は口の周りと輪郭にヒゲを生やしたかなりのコワモテ。50人ほどを検挙に導いた凄腕Gメンだった。万引きだけでなく盗み撮り犯も捕まえていたそうで、犯人が証拠隠滅のために携帯電話を壊そうとすると、その腕をパンチ。携帯を踏まれる前に蹴って移動させる高速テクで、居合わせた客から万雷の拍手を送られたことがある。

「捕まえてバックヤードに連れていき、警察に引き渡すまでが業務だそう。犯人が刃物を持っている可能性もあるため、いつもヒヤヒヤしていたそうです」(芸能関係者)

 昨年のM-1 覇者・錦鯉は、長谷川雅紀が芸歴27年、渡辺隆が22年とあって、バイト経験も豊富。ツッコミの渡辺はコールセンターやコンビニエンスストア、一昨年のM-1挑戦時は市場で野菜の仕分けをしていた。かたや長谷川はフェリーで皿洗い、一昨年のM-1時は水道料金の徴収をしていた。地元の北海道では20歳のとき、ホストクラブに在籍。女性客をもてなしていた。フレッシュで、はっきりした目鼻立ちでマスクは申し分なかったが、いかんせん話術に難があり、長くは続かなかった。

 メイプル、すゑひろがりず、錦鯉はM-1で夢をつかみ、バイト生活から脱出した。今年のM-1 はネタはもとよりバイト事情にも注目したい。

(北村ともこ)

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