安倍政権「失言防止マニュアル」を斬る(1)上西小百合も「論外」と批判

 丸山穂高衆院議員の北方領土を巡る「戦争発言」「女を買いたい発言」が物議を醸し、国会議員の質の低下が危ぶまれる中、自民党は「失言防止マニュアル」を配布した。これで夏の参院選に向けて引き締めも万端─。と思いきや、現物を入手すると、党内でも「くだらない」とあきれられるシロモノで‥‥。

「何をいまさらって感じだよ。こんなマニュアルを作ること自体が恥ずかしい」

 嘆くような口調でこう語るのは、自民党ベテラン議員である。国会議員の失言や暴言が繰り返される中、自民党は〈「失言」や「誤解」を防ぐには〉と題した「失言防止マニュアル」を作成。5月10日に党所属の国会議員や都道府県連、参院選候補者に向けて配布した。

「第一次安倍政権は、07年の参院選前に閣僚の失言などで辞任ドミノが相次ぎ、参院選で大敗した苦い経験がある。官邸から『作れ』と直接的な指示は出ていませんが、安倍晋三総理(64)が失言に敏感になっているので、党遊説局が今年の2、3月に研修会を開き、『遊説活動ハンドブック』の号外版としてまとめたものです」(自民党関係者)

 そのため、塚田一郎前国土交通副大臣(55)や桜田義孝前五輪相(69)が失言で辞任した4月以前から制作に取り組んでいて、慌てて作ったわけではないという。が、そもそも研修会を開いておきながら失言している時点でお粗末なかぎり。

 そんな自民党内でも波紋を広げる「失言防止マニュアル」の中身の冒頭には、

〈発言は「切り取られる」ことを意識する〉

〈報道内容を決めるのは目の前の記者ではない〉

 という記述が並び、報道に対する注意喚起を呼びかけている。続けて、タイトルに使われやすい「強めのワード」として、(1)歴史認識、政治信条、(2)ジェンダー(性差)、LGBTについての個人的見解、(3)事故や災害、(4)病気や老い、(5)身内と話すようなウケも狙える雑談口調の表現─を挙げた。これに物申すのは、元国会議員の政策秘書で作家の朝倉秀雄氏。

「これまでの失言は強めのワードだったからいけないのではなく、発言内容が問題なんです。桜田前五輪相の『復興以上に大事なのは高橋さんだ』発言にしても、震災被災者の気持ちを考えていないから逆なでしてしまう。また、国会議員にはご高齢の先生方が多く、ジェンダーやLGBTのような性の多様化についていけていません。パワハラや性的ハラスメントの意識も低く、永田町ではいまだに『女のくせに生意気だ』と思っている議員がいるのが現実です」

 衆院議員時代の14年に、自民党の大西英男衆院議員(72)からハラスメント的やじを浴びせられたり、タレント転身後、言動が何かと注目を浴びる上西小百合氏は、経験談を交え一刀両断する。

「社会人が日常会話の中でも気をつけていることが多く書かれていますから、こんなことを念入りに説明しなければ表に出せない政治家は論外。私の場合は『切り取られる』というか、『シャネルの服は着てません』とか『ズル休みしてません』とか何度説明してもなかなか伝わらなかったですね、キャラの問題でしょうか(笑)。冗談めかして発信したメディアやツイッターでの内容が『猛批判』など過激な見出しをつけられ、そんなつもりじゃなかったんだけど‥‥と思うことも」

 マニュアルは失言の回避策として、「句点(。)を意識して、短い文章」や「『危ない表現』を確認」と指南している。そんなことまで指導されるとは‥‥。国会議員の質は、国民が考える以上に劣化しているのだろう。

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