安倍政権「失言防止 マニュアル」を斬る(2)麻生財務相は早速実行!?

 国会議員らに配布された資料には、〈聴衆に「届く」演説を考える〉と題したペーパーもあった。演説時の話し方などをアドバイスした内容で、

〈聴衆を参加させる「関西準キー局型」演説〉

 という項目では、聴衆との距離を縮めるうえで〈関東と関西のバラエティー番組の違いに「スタジオの観客が映るか、映らないか」というポイントがあります〉と解説。この内容にツッコミを入れるのは、時事ネタを織り交ぜた単独ライブ「Q展」での漫談が評判の芸人・ユリオカ超特Qだ。

「関東の番組でもスタジオの客はバンバン映りますよ。何を基準に関東と関西を分けているのか、そもそものポイントがズレている。もし関西というキーワードを入れるなら、本音を好むってことですかね。毒舌で知られる上沼恵美子さん(64)は、誰にでも忌憚のない意見を言うから人気があるんです。それにネット社会になる前は、タレントが地方のローカル番組に出演し、際どい発言でスタジオを盛り上げても東京まで届いてこなかった。その構図は政治の世界も似ていたのですが、塚田議員が北九州市の集会で『忖度発言』をした時、あっという間に報道された。今は本音を吐く『関西準キー局型』をマネしたら、むしろ失言が増える可能性が高まりますよ」

 さらにペーパーには、

〈演説会の弁士を「劇のキャスト」として考える〉

 として、選挙中の個人演説会で複数の応援弁士が同じ話を繰り返すことを避けるため、〈各応援弁士を演劇のキャストのように考え、それぞれに役割を持たせる〉とし、さらに〈弁士にアピールしてもらいたいことを簡単なメモにまとめ出演依頼とともに渡してあげる〉と教示する。

「各応援弁士を演劇キャストとして考えろって、小泉進次郎衆院議員(38)や安倍総理が選挙の応援に来てくれた時、自分より有名な人に対し、演出家になれってことですよ。しかもアピールしたいことをメモで渡したら、先輩に嫌がられますよ。僕が明石家さんまさん(63)に『こんな感じでしゃべってもらえますか』と言うようなもの。このペーパーを実行したら、党内での関係性も悪くなりますよ」(ユリオカ超特Q)

 もはや資料は反面教師としての参考にもなりえていない。元警視庁広報課長で危機管理コンサルタントの屋久哲夫氏は、マニュアルをこう総括する。

「こうしたマニュアルが外部に漏れてしまうのは、情報管理の面で問題があるということ。私はさまざまな企業のコンサルタントをしていますが、普通はこのマニュアルのように『自民党』とクレジットは入れません。外部流出した時のことを考えて、『怪文書』とシラを切れるような体裁で書面化するのが一般的。そもそも、こんなマニュアルを必要とするような意識の低い議員が多すぎますが‥‥」

 一方、5月21日に行われた、党内最大勢力の細田派(清和政策研究会)のパーティーでは、こんな形で「マニュアル効果」が見られたという。

「麻生太郎財務相(78)が来賓としてパーティーに駆けつけたんです。それで登壇して挨拶した時、『安倍さんにとって大事な清和会のパーティーだから、何をおいても来なきゃならんということで、どんな用事をすっぽかしてでも来なきゃと。まぁこれ以上しゃべるとろくなことにならないので、これで私の挨拶は終わります』と言って、30秒で降壇したんです。『すっぽかす』発言にはヒヤヒヤさせられましたが、麻生さんも失言防止マニュアルを読んでいたのかと、話題になりました」(自民党関係者)

 夏の参院選まで口を閉じておくのが、最良の失言防止対策になりそうだ。

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