安倍政権の失政とアフター・コロナの爪痕「飲食店3分の1」「生活苦で犯罪」

「日にちを追うごとに増加している」

 5月22日、加藤勝信厚生労働相(64)が記者会見で、新型コロナ関連の解雇や雇い止めが1万835人に上ったことを明かした。

 緊急事態宣言発令から約2カ月にわたって経済をストップさせた代償は大きく、解除後も企業が雇用維持できるのか、早くも正念場が訪れようとしている。経済評論家の佐藤治彦氏はこう警鐘を鳴らす。

「安倍政権は持続化給付金や雇用調整助成金など、さまざまなことにお金を使うけど、砂漠に水をまくようなもので、場当たり的なものばかり。第2波が来るとされる秋までの4カ月で、経済と感染防止策の両輪を回すことができなければ、実体経済はさらに悪化し、過去50年で経験したことがない大失業や大倒産が年内にも起こるでしょう」

 5月15日には、80年代に「レーナウーン♪ レナウン娘が♪」のCM曲で知られる老舗アパレルメーカーのレナウンが経営破綻。うどんすきの老舗「美々卯」も首都圏の6店舗全てを閉店した。いずれもコロナ禍で、体力がもたなかったとみられている。

 次々と発表される3月期決算でも、三菱自動車が257億円の赤字、ANAホールディングスが587億円の赤字になる中、衝撃が走ったのは、ソフトバンクグループの1兆3646億円の巨額赤字だ。経済ジャーナリストの松田一雄氏は損失の理由をこう語る。

「携帯電話事業では過去最高の利益を更新しましたが、痛手だったのはファンド事業。20年3月期は1.9兆円を超える赤字となり、孫正義会長兼社長(62)は5月18日の会見で、投資先の88社のうち、『15社くらいは倒産するのではないか』と明かしています。感染第2波も警戒していて、それが現実になれば深手を負うことになりそうです。グループ全体で従業員は約7万6000人、家族を含めて20万人、取引先まで入れたら100万人に影響を与えますからね」

 大企業でも痛烈な打撃を受けるならば、中小企業はどうなってしまうのか。考えただけでもゾッとするが、市民生活に大きな影響が出るのは必至だ。

「失業者が増える状況に歯止めがかからなければ、懸念されるのは不動産不況です。ただでさえ東京五輪に向けてあっちこっちに建物を作ったのに、どんどん空き家になってしまう。住宅ローン返済ができずに家を失ったり、家賃を払えずに部屋を追い出されれば、ネット難民やホームレスが増えるのは避けられません」(佐藤氏)

 自粛期間が終わったからといって、仕事帰りのサラリーマンが今までのように飲み歩く光景も見られなくなる可能性があるという。

「職を失ってしまった方の中には、生活苦から犯罪に手を染める人が出てくるかもしれません。治安が悪化した街で飲むのが怖くて、なかなか近づけなくなることも」(佐藤氏)

 飲み歩く人が減れば、飲食業界にとっては死活問題になる。すでに焼き鳥チェーン「鳥貴族」の20年4月度の売上高は、臨時休業が響いて前年同月比96%減まで落ち込んでいる。

「鳥貴族だけに限らず、チェーン居酒屋や焼き肉屋など厳しい経営が続けば、そのうち繁華街では3分の1以上、看板の明かりが消えてしまうかもしれない。一方、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンは業績好調です。これまで1人利用が多かったのが、家族分の購入者が増えて、客単価が上がって儲かっています。感染第2波が来れば、飲食業界の勝ち負けは、より鮮明になるでしょう」(松田氏)

 新型コロナで当たり前だった生活が破壊されたら、仕事があり、帰る家があるだけで、幸せだと思えるのかもしれない。

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