国会が始まった12月6日、岸田首相は冒頭の所信表明演説でマイナンバーカードを使ったスマホのワクチン接種証明書について言及し、12月20日からスタートさせるとした。紙での交付は7月から始まっていたが、ようやくデジタル化の途に就くことになる。自治体に対しても公開・運用を連絡済みで、76カ国・地域(11月19日時点)でも利用が可能だ。
一方、東京都では国に先駆けて既に11月1日からスマホの接種証明書の運用を開始している。「TOKYOワクションアプリ」というものがそれだが、正直、東京に住んでいて、これについて人が話しているのを聞いたことがない。事実、実態は惨憺たるもののようだ。
「11月1日の運用開始から1カ月以上経った12月7日時点での登録者数はわずか3%という非常に低いものでした。人数で言えば約32万人で、これは2回目の接種を終えた都民の3%でしかないという意味なので都民全体の3%ではないということにも留意しておくべきです」(社会部記者)
これでは20年6月にリリースされた接触確認アプリのCOCOAが半年後の今年1月時点で、陽性の登録者のわずか2.7%しかいなくてほとんど用を成していなかったという悪夢が思い出され、少なくともスタート当初は二の舞といった状況だ。
TOKYOワクションアプリを登録すれば飲食店や宿泊先が提供する特典を得られるというメリットはあるが、これに対応している店舗も2300ほどでしかない。「9人以上の集団の来店では証明書が必要」との都の方針があるため登録さえしておけば便利なはずなのだが、それ以前に周知されていないから広がらない。もちろん店舗からは「確認に手間がかかる」との声が広がっている。
「都ではこれを実現するにあたって8月にアプリの開発費に2.5億円、広報・啓蒙の費用に7.5億円の予算を組んで、結果、博報堂が10億円で受注した経緯があります。ところが知られていないというのだから、さらに追加的に予算でもかけるんでしょうか」(同)
COCOAではさらに4カ月以上機能していなかったというケチがついたものだが、相変わらずの丸投げ体質は変わっていないようだ。
(猫間滋)