またも、政府の行き当たりばったり政策のせいで、国民の貴重な血税がドブに捨てられるのか……。
コロナ禍のなか、日本への入国は困難として、東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会をはじめ、政府、東京都などの5者会議により、海外からの観客受け入れ断念が決定したのは、3月20日のこと。それにより、政府が73億円という莫大な予算をつぎ込んで開発中だった「オリパラアプリ」が、使用されず無駄になることが濃厚になってきたというのだ。全国紙政治部記者が語る。
「このアプリは、内閣官房の情報通信技術総合戦略室(IT総合戦略室)が中心となって開発しているものですが、オリパラのため来日する選手や関係者、また観戦旅行者ら全員に入国時、ダウンロードしてもらい、出国までの健康情報を把握するという、いわば感染予防の切り札となるシステム。そのため、開発費に34億円、維持費に39億円と、合計73.2億円という予算が計上された、まさに壮大なプロジェクトだったんです」
政府は、これまでにもコロナ感染対策のため、数々のシステムを開発。ただ、開発費では、厚労省のワクチン接種円滑化システム(V-SYS)が23.9億円、新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)が11.9億円、そして、不具合で政府のデジタル音痴ぶりを世間に知らしめた、あの「COCOA」でさえも、約4億円程度。そう考えると、73億円というこの「オリパラアプリ」の開発が、いかに政府肝いりのプロジェクトだったかが分かるはずだ。
「金額もさることながら、このアプリが完成・実現すれば、霞が関にバラバラに存在する各省庁のシステムを連携することが可能になる、それが最大のメリットなんです。通常、入国時の窓口は外務省や入管(法務省)、税関(財務省)ですが、これに厚労省のシステムを連携できるんです。そして国内滞在時には厚労省の新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システムや、混雑検知システムと連携して健康状態の管理が可能になります。さらに出国時にも陰性証明書発行システムと連携するなど、入国から出国まで省庁の垣根を飛び越えて、すべてを繋げることが可能になります。もちろん、実現すれば、の話ではありますが……」(前出・記者)
そんな背景もあり、ほかのシステムと比べ破格な開発費が使われたというわけだが、とはいえ、海外からの観客受け入れが見送られた今、この「オリパラアプリ」はどうなってしまうのだろうか。
「実は観客受け入れ断念が発表される3日前の17日、予算委員会で伊藤孝恵参議院議員がズバリ、その点を尋ねたところ、答弁に立った加藤勝信官房長官は『(オリパラの)開催を契機に開発を進めておりますが、我が国に訪れる選手、スタッフ、関係者にも活用いただくことをまずは想定をしております』としながら『他方、必ずしもオリパラ向け用途に限定しているのではなく、日本に入国される方向けに、入国に係る様々な手続きを一つのシステムで一体的に管理することとしている』と発言しています。つまり、オリパラ以外でも出入国の際に活用する価値は十分にあるのだと……。ただ、民間企業の技術者に言わせると、実に高度な連携を要するシステムのため、通常であれば開発までには本来なら3年程度はかかる、という意見もあり、それを突貫作業で、となると、COCOAの二の舞となることは必至といった意見も少なくありません」(前出・記者)
報道を受け、SNS上でも《聖火リレーが始まったというのに、まだ開発中っておかしいだろ?》《開催日までに間に合っても運用してみて不具合が見つかることは火を見るより明らか!金をドブに捨てたも同然だ!》といった批判が噴出している。
菅内閣がデジタル改革に期待を込め、誕生させたデジタル庁だが、この先も混迷を極めることは必至。お荷物にならないよう願いたいものだ。
(灯倫太郎)