コロナの感染拡大防止と経済活動再開の両立を目指し、「ワクチンパスポート」が世界的広がりを見せている。ヨーロッパでは、すでに文化施設やカフェ、レストランを利用する際に提示を義務付けている国もあるが、日本でも6日、政府による「デジタル社会推進会議」(議長・菅義偉首相)により、ワクチンパスポートをオンラインで年内にも発行する方針が決定した。
むろん、日本の場合、義務化するわけではないため、電子式「ワクチンパスポート」をスマホアプリに搭載、提示すれば、県をまたぐ旅行や飲食店への入店制限が緩和されるというものだ。
ところが、「ワクチンパスポート発行」の報道を受け、SNS上には反対意見が続出。
《ワクチンを打っても3カ月しか効かないんですよね?なのにパスポート発行って何の意味があるの?》《ワクチンパスポートを持っているからって、マスクなしでしゃべる人が増えそう》《パスポート持参で安心して密でお酒を飲むほうがよっぽど危険》《基礎疾患があったり、事情があって打てない人や打たない人もいるんだから、偏見や差別を助長するはず!》
社会部記者が語る。
「新型コロナ対策分科会の尾身茂会長が開設、9日までのフォロワー数が62万人を超えるインスタグラムにも、『ワクチンパスポート反対』のコメントが溢れたそうですからね。たしかにワクチンを打つことで、重症化を防止できることは数字で明らかになっていますが、感染拡大を抑止する効果は、確実とはいえない。つまり、ワクチンパスポート発行による行動緩和が、感染拡大を招く可能性があるということです」
さらに、ワクチンパスポートをめぐってはもうひとつ大きな問題がある、というのが前出の記者だ。
「国内用のパスポート作成には、おそらくマイナンバーカードの登録が不可欠になるはず。それを政府が管理するVRSシステム(ワクチン接種記録システム)で照合し、その人が接種が終わっていることがわかれば、接種済み証明書がスマホで受け取れるということになるのでは。ただ、現在マイナンバーカードの所有者は国民の3割程度。しかも、ワクチンを接種してからVRSに反映されるまでにタイムラグがあり、自治体によっては1カ月近い遅れが出ているところもあるとされます。さらに、紙でもデジタルでも完全な本人確認のシステムが確立していないため、どこかで障害に突き当たる可能性は大きい。デジタル庁が出来たのだからと、見切り発車すると接触確認アプリ『COCOA』の二の舞になりかねません」
くれぐれも、発行したのだから後は自己責任で、なんてことにならないよう、デジタル庁には頑張ってもらいたいものだ。
(灯倫太郎)