「コロナなんもしない人」の業務報告書(2)すぐ保険適用にするべき

 この看護師は昨年末、家族全員に1週間の発熱が見られたため、感染を疑いPCR検査を申し込んだ。が、門前払いに近い対応だったという。自主休業し、その後、自費で民間の検査を受け、コロナ陽性が発覚した。

「1年前に比べれば、検査可能件数は飛躍的に増えているはずなのに‥‥。働いても満足な支援はない、PCR検査すら受けられないということで離職者は増える一方です。この3月も年度末ということで、大勢の看護師や検査技師が辞めていきました。その穴は未経験者で埋めざるを得ず、結果的に今まで1件2時間で終わったPCR検査が4時間かかるなど、業務が滞っています」(看護師)

 国や厚生労働省の、最前線で激務に耐える医療従事者へのケアの不備が、マンパワーの欠如を引き起こしているのだ。前新潟県知事で弁護士の米山隆一氏は、こうも指摘する。

「そもそもPCR検査に関しては、今すぐにでも完全に保険適用にするべき。当初は空気感染の疑いや希望者が殺到した末のクラスター感染を懸念して保険適用は不適当と考えられていましたが、今となればみんながマスクをして、ソーシャルディスタンスを保てば感染リスクが決して高くないことがわかっている。一般の診療所で軽症のコロナ患者を扱えることになれば、患者が減っている開業医と激務の総合病院との役割分担が可能になります」

 地元の町医者でPCR検査を受け、陽性判定が出たら大病院へ─。負担を一極集中させないためにも、実現に舵を切ってもらいたいのだが、医療ジャーナリストによれば、こんなキナ臭い話もあるという。

「末端の医療従事者がひどい扱いを受ける一方で、東京五輪組織委員会などで要職に就く一部の人間は、3日に1度、PCR検査を受けているそうです。コロナ禍で開催にこぎつけるために、ホスト組織から感染者を出したくないという気持ちはわからなくもないですが、市民が受けられないPCRはそちらに回されているとしか思えません。アメリカやインドでは、各州で1日に何件のPCR検査が可能か、毎日発表しています。そういうコロナ対策を可視化して、国民に提示するシステムすら作っていないのは、政府や厚労省の怠慢だと思います」

 米山氏もこれに続く。

「定期的な積極的疫学調査が行われてこなかったことも問題です。例えば、時短営業を要請する際にも『何万件の感染者データで、接待を伴う飲食店での感染は何割』といったデータが国民に示されていれば、経営者にとっても客にとっても行動の指針になるはず」

 職員の宴会クラスター、感染者接触確認アプリ「COCOA」の不具合と不始末が続く田村憲久厚労相(56)だが、これ以上「なんもしない人」であってもらっては困るのだ。

ライフ