新庄監督を名将にする「ノムラ式」教育理論(2)12球団の2軍戦を見て回り

 時を戻そう。新庄新監督誕生のプロローグは、昨年の12球団合同トライアウトまでさかのぼる。

「受験前に球団から届いた『いつか会える日を楽しみにしています』というメールをきっかけとして、監督になる構想を自ら立てたことを会見で明かしていました。選手としてオファーがない時点で次期監督として期待されているだろう、と察知したわけです。この1年間は日本ハムのファームがある鎌ヶ谷を中心に、12球団の2軍戦をくまなく見て回ったそう」(スポーツ紙デスク)

 当然、球場に赴く際には入場パスが発行される。おのずと球団も新庄監督の動きをチェックしていたのだ。

「日本ハムは新庄監督の研究熱心なところを買っていた。気になる選手が出てくるたびに、どういう選手なのか旧知の岩本氏からレクチャーを受けていたともいいます。バリでの10年間、まったく野球を見ていなかったのですから、選手の顔と名前を覚えていないというのは事実でしょうが、プレーしている姿を見ればわかるように全てインプットされたはずです」(スポーツ紙デスク)

 選手のデータは十分。さらに自慢の勘ピューターによって導き出されたプランこそが、会見で明かした、

「投手3人野手4人のタレントを作れば楽しく強いチームになる」

 しかし、3年連続5位に沈むチームに該当選手はいるのだろうか。球団OBで野球評論家の田中幸雄氏が解説する。

「投手の3人中2人は、エース格の上沢直之(27)、ルーキーながら10勝を上げた伊藤大海(24)で確定です。今年の成績で判断するならば、残りの1人は助っ人で2年連続まずまずの成績を残したバーヘイゲン(31)でしょうか。野手は近藤健介(28)以外に該当する選手がいるかどうか。リードオフマンの西川遥輝(29)は肩に不安、淺間大基(25)や野村佑希(21)などの若い選手は成績がついてきていません」

 防御率こそリーグ3位ながら、打率・本塁打・打点の打撃三部門はリーグ最下位。浮上のためには打撃面のテコ入れは必須だ。

「かつて阪神OBが、現役時代の新庄監督を2軍キャンプで直撃したら『今日は話しますけど、有名になったら話しませんよ。普段、見てないのに』と言われたんです。そういう意識があるだけに、新庄監督は選手たちの練習をつぶさに観察し、自らきちっとチェックすると思います。自分がそうされたように、抜擢する時は使い続けるでしょう」(球界OB)

 さらにサポート役としては、稲葉新GMにも期待がかかる。

「新庄監督が任命した〝左打者専用コーチ〟として秋季キャンプで若手を指導していますが、特に注力しているのは清宮幸太郎(22)。今季はファームの本塁打王こそ獲りましたが、依然として空振りが多く、打率は1割台の体たらく。今オフから来季にかけて、編成部門は引き続き吉村浩前GM(57)が担うため、春季キャンプからシーズンを通し、GM兼〝特命コーチ〟として清宮の主砲としての育成に心血を注ぐ見通しです」(スポーツ紙デスク)

 来季5年目を迎える未完の大器は、練習嫌いもささやかれてきた。はたして新庄の想いを汲んで、主役の座を手にできるだろうか。

*「週刊アサヒ芸能」11月18日号より。(3)につづく

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