日本ハムの救世主となってくれるのだろうか。ゼネラルマネージャーの稲葉篤紀氏が台湾球界の視察を終えて帰国したのは9月13日だった。
視察の主な目的は、台湾プロ野球・富邦ガーディアンズの最速157キロ右腕・曽峻岳(ツェン・ジュンユン)と、U-18大会決勝戦で先発した156キロ右腕・孫易磊(ソン・イーライ)だったが、現地入りした甲斐があったようだ。台湾各メディアは「孫易磊は日本ハム入りで決まりそうだ」と伝えていた。
「孫易磊はU-18大会決勝戦で日本代表の前田悠伍(大阪桐蔭)と投げ合いました。両投手の実力は互角。つまり、日本ハムはドラフト1位指名で競合するレベルの投手を獲得することになります」(アマチュア野球担当記者)
新庄監督も稲葉GMから報告を受けていたのだろう。映像資料を見た感想として、
「一目惚れするくらいのボールを投げているよね」
と、孫を絶賛していた。
「曽峻岳は、まだどうなるかわかりません。海外でやってみたいという願望を持っているとの報道もあれば、それを否定する声も聞かれました。まだ21歳と若く、伸びしろは十分」(現地メディア)
今春のWBCではクローザーを務め、日本ハム以外のNPB球団や、米スカウトも熱心にチェックしていた。
稲葉GMの台湾入りは、あくまでも“視察”目的であり、今後の交渉については稲葉GMが持ち帰った映像資料などを球団内で見極めてから方針を決めるという。すでに来シーズンに向けて動き始めているのは間違いないが、最終決定はドラフト後になりそうだ。スポーツ紙記者が言う。
「ドラフト会議の結果次第で変わってくると思います。日本ハムが最も重視している補強策はドラフト会議です。右のオーバーハンド、リリーフタイプの投手をドラフト指名できるのなら、曽峻岳の獲得交渉から下りるのでは」
台湾メディアはドラフト1位レベルの孫の日本ハム入りが決まったかのような論調だった。もっとも、孫と投げ合った前田だが、「将来性の投手。即戦力ではない」というのがNPBスカウトの大方の評価だ。
だが、孫については新庄監督のことだ。一目惚れした右腕をいきなり使って、ファンを驚かせてくれるかもしれない。
(飯山満/スポーツライター)