新庄監督を名将にする「ノムラ式」教育理論(1)「地味な作業を積み重ねろ」

 深紅のスリーピースに超高襟白シャツを着こなした「ビッグボス」の就任会見には、35社119人ものマスコミが駆けつけた。その一挙手一投足は、すでに各局を〝電波ジャック〟状態だ。とはいえ、決してピエロでは終わらない。新庄監督は、あの名将の系譜を受け継いでいるのだ。

「朝5時に練習場に行って練習して、本来の練習時間にはゆっくり行って遅刻していた」

 と、真剣な表情で自身の現役時代について語るのは、日本ハムの新庄剛志新監督(49)だ。自らの役職を〝BIG BOSS〟だと銘打った就任会見から数分後に開かれた、新聞記者相手の囲み取材の場での発言である。スポーツ紙デスクが解説する。

「ド派手な就任会見はテレビのワイドショーやYouTubeで生配信されましたが、あくまで、映像が流れることを前提としたパフォーマンスにすぎません。途中で盟友・岩本勉氏と演じた質疑応答の応酬を含めて、全てエンターテインメントの一環です。サプライズ感を醸しつつ、ある意味、予定調和のまま会見は終了しました」

 しかしながら、動画提供がなくなった後の囲み取材では、完全にスイッチが切り替わる─。

「異色なスーツのジョン・トラボルタ・スタイルは崩さないものの、用意されたイスに座ると記者たちに丁寧に対応してくれた。『努力なくしてレギュラーは取れない』『地味な作業を積み重ねていくしかない』といった趣旨で、終始常識的な論理を展開していました」(スポーツ紙デスク)

 冒頭のコメントと同時に「みんなが寝ている時間をどう活用するか考えないと淘汰される」と選手たちに努力を求める、実に真っ当な考えを明かしていた。

「軽い調子でふざけた質問をした記者には『それはないかな』と一蹴するような一幕も。会見時のおちゃらけムードなど、微塵も見せませんでした」(スポーツ紙デスク)

 突然の真面目キャラへの変身に、驚きを隠せない向きもあるかもしれない。しかし、さる球界OBは「この二面性こそが新庄なんだ」と指摘し、こう続ける。

「ストロボに向けてアロハポーズを決めるひょうきんキャラは仮の姿で、実際はクソ真面目なメンタルの持ち主。この表裏一体な人格を見事に育て上げたのは阪神時代の師匠である故・野村克也氏です。今回、監督に就任するにあたって選手時代に配られた『野村ノート』を読み直したとか。会見で選手に配ると予告した『新庄の教え』のベースは、人間教育に重きを置いた『ノムラの教え』になるでしょう。チームの雰囲気は大きく変わりますよ」

 さっそく秋季キャンプから、チーム改革に動く腹積もりだ。

「一番の狙いは『人の目が選手を伸ばす』という野村氏の哲学。新庄が日本ハムに入団した04年の春季キャンプでは、沖縄・名護にファンが押し寄せて大フィーバーが起きました。いきなり注目されただけに恥ずかしいプレーは許されず、選手たちの実力がメキメキ向上した。当時を知る稲葉篤紀GM(49)もその絶大な効果を知っていますから、ともにその再現を期待しているようです。ただし、秋季キャンプ第2クールが始まる11月8日から、キャンプ地の沖縄・国頭に合流する事前報道は控えるようお達しがあった。むやみに人流を作ってコロナ第六波の原因になったらシャレになりませんからね。相応の集客効果がすでに見込まれるというわけです」(スポーツ紙デスク)

 就任早々、〝新庄フィーバー〟は早くも盛り上がりを見せ始めている。

*「週刊アサヒ芸能」11月18日号より。(2)に続く

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