カタールワールドカップアジア最終予選で崖っぷちに立たされていた日本代表が、ホームの埼玉スタジアムでグループ首位のオーストラリアに劇的勝利をあげ、日本中に歓喜と安堵の声があふれたのは12日。ところが翌日、その熱気が悪い意味でクローズアップされることになった。
物議を醸したのは、埼玉スタジアムに集まった一部サポーターたちのマナー。コロナ感染対策で禁じられている「声出し応援」どころか、チャント(応援歌)を歌い続けたり、監督などへのコールなど、まるでコロナ前のような光景が繰り広げられたのだ。しかも、選手側からそれをポジティブに捉えているようなコメントが飛び出したから、さあ大変。
「勝利に喜ぶ気持ちはわかります。でも、SNSにアップされた光景には”本当に声出し禁止されているの”と、疑問しか浮かびませんでした。日本サッカー協会が『大声で歌う、コールを行うなど、周囲の皆さまに不安を与え、ルールをしっかり守って応援いただいている方々に不快な思いをさせる』行為があったと遺憾の意を示すのも致し方ないところ。ただ、今後これが改善されるかどうかは分かりません。というのも、酒井宏樹選手(浦和レッズ)が自身のインスタで『ギリギリでしたが次に繋がりました。サポーターのバススタジアム入場時の久々の応援歌痺れました!選手やスタッフは勿論、会場みんなで勝ち取った勝利。素晴らしい雰囲気をありがとうございました』と投稿。文面は真摯ですが、これは禁止行為である声出し応援を認めるコメントです。そして、物議を醸したあとも謝罪気味ではありましたが『ただ凄く僕に響いたのも事実です』とやはり応援へ感謝して、その後投稿は削除。また、酒井選手だけじゃなく森保監督も、観客を煽るようなポーズをしているのがテレビで抜かれ、これには『監督まで声出せと言ってるやん』などブーイングがありました」(スポーツライター)
森保監督はともかく、酒井宏樹選手といえば好感度の高い選手。それだけに今回の投稿には「酒井宏樹だけにショック」という声も多く、同時に「Jリーグファンのこれまでの苦労を何だと思ってるのか」といった怒りの声もあがっていた。
「今回の騒動でいちばん残念なのは、世間で『やっぱりサッカーファンは行儀が悪い』という声が聞かれたこと。これにJリーグファンがとても怒っているんです。というのも、コロナ下でのJリーグ有観客開催では徹底的に感染対策ルールを守って観戦してきたファンが多く、問題はほとんど起きていません。当然、クラスターなども発生していなかった。それだけに今回の代表戦の浮かれた光景を見て愕然としてしまった。『Jリーグファンとして悲しいです』『酒井宏樹もJリーグの選手ならきちんと意識を持ってほしかった』『森保監督が客を煽ってたときにはあ然とした』など、代表戦のお祭り気分がこれまでのファンの努力を無にしてしまう可能性があると非難していますね」(前出・スポーツライター)
ちなみに今回は、自治体の決めた観客の動員上限にから5000人増やす措置として、ワクチン接種証明や陰性証明などを提示して観戦できるエリアを増やすという実験開催でもあったはず。その一方で、勝利に沸くあまり、延々と歌われ続けるチャント。「あのヒップホップの野外フェスを思い出した」と言われていることを、監督や選手、そしてサポーターはどう思うのか…。
(飯野さつき)