スマホゲームの「モンスターストライク」(モンスト)などでお馴染みのIT大手の「ミクシィ」が、J1リーグの「FC東京」の経営権取得に動き出したことが判明した。ミクシィはもともと18年に主要株主となって、19年からは同社のエンターテインメント部門のロゴである「XFLAG」を胸の部分の広告として出していた。
「FC東京は首都の東京をホームとする唯一のJ1クラブですが、一方でチーム戦績としては20年度のルヴァンカップ(カップ戦)優勝が11年度の天皇杯制覇以来と、いまいちパッとしません。また、東京がホームなので昨年度はコロナ禍をモロ被りする形となって集客減がクラブ財務の足を大きく引っ張っていました。そんな逆風の中、ミクシィは年間5億円超と言われる広告や集客で大きく貢献してきました」(経済ジャーナリスト)
なぜミクシィがそれだけFC東京に肩入れしてきたかと言えば、事業多角化に遅れたIT企業の弱みがあった。ミクシィはIT大手とはいっても、経営の内実はスマホゲーム頼りの“1本足”打法。会社としての安定性を欠くのだ。そこで18年に同社が事業の“第2の柱”に掲げたのがスポーツ事業で、FC東京のほかプロバスケのBリーグの千葉ジェッツ、プロ野球のヤクルトスワローズのスポンサードなどを行っていた。
「しかしスポーツとITを融合させて行く上では、ソフトだけでなくハード面の“箱”が欲しいところ。千葉ジェッツでは19年に経営権まで取得してアリーナ建設まで行ってきた実績はあるものの、よりメジャーなスポーツ・チームは喉から手が出るほど欲しかった。だからプロ野球のヤクルトやオリックスにも手を伸ばし、特にヤクルトに関してはFC東京と併せた『巨大クラブ構想』があると報じられたこともありました。ところが思い出されるのが04年のプロ野球再編問題時に起こった、当時はホリエモンが率いていたライブドアと楽天の新規参入問題で、参入障壁は高い。そこでコロナ禍を逆手にとってまずはFC東京から手を付けたというタイミングの問題なのかもしれませんね」(前出・ジャーナリスト)
FC東京は元は東京ガスのサッカー部で、実際の運営に当たっている「東京フットボールクラブ」に対し、およそ370いる株主の中でも主要株主として付き合ってきた経緯があるので話はまとめ易い。IT企業がプロスポーツ経営に乗り出す事例は年を追うごとに増していて、古くは野球のソフトバンクホークス、楽天イーグルスがあって、のちにはDeNAもベイスターズで参入した。楽天に至ってはヴィッセル神戸も手に入れ、ほかにもサーバーエージェントがFC町田を、メルカリが鹿島アントラーズを買収するなど、かなり活況を呈している。
「一番のメリットはブランディングや広告効果でしょう。ITの新興企業はまずは名前を覚えてもらう必要があります。ましてやミクシィはスポーツ事業を第2の収益の柱とまで考えているので、クラブの経営権取得は大きなビハインドになるはずです」(ITジャーナリスト)
となると次は念願のスワローズ買収が同社で当面の最大目標となり、ということは神宮球場があってオリンピックを終えたばかりの代々木・神宮エリアでは新たな再開発案が浮上してもおかしくない。
とその前に、まずは今後J1でどんな結果を残せるか。楽天のヴィッセル神戸におけるイニエスタ獲得のような大物外国人助っ人の獲得など、FC東京サポーターの期待はいや増すだろう。
(猫間滋)