米中央軍が8月30日、アフガニスタン駐留米軍の撤退完了を発表。これにより、2001年の米中枢同時テロ後、約20年に及んだ「米国史上最長の戦争」が正式に終結することになった。
だが、米軍の完全撤退を目前に控えた8月15日、イスラム武装勢力タリバンが、アシュラフ・ガニ大統領率いるアフガニスタン政府を追い出し、国を掌握。その後、カブール空港では、大規模な自爆テロが発生し、「イスラム国」(IS)による犯行声明もあり、関係各国の間で、アフガニスタンが再びテロリストの温床となるのでは、との懸念が高まっている。
そんな中、アフガン復興を支援するとして、タリバンと急接近しているのが、中国だ。
国際ジャーナリストが語る。
「中国の王愚・駐アフガン大使がタリバン幹部と接触したのは先月24日のこと。さらに28日には王毅外相兼国務委員が、天津でバラダル師率いるタリバン代表団と会談しています。『一帯一路』という巨大経済圏構想を掲げる中国にとって、アフガンはいわば中東への中継点、そのためアフガンを影響下に置けば中国への経済的利益が大きい。加えて、国境を接する新疆ウイグル自治区の治安対策も可能になるため、上手く付き合えれば中国側のメリットは計り知れません。しかも今、中国には新型コロナウイルスの起源をめぐり国際社会から逆風が吹いているので、アフガン問題を契機になんとか追い風に変えたいという思惑もある。そのあたりの事情がタリバンとの急接近の背景にあることは間違いありません」
とはいえ、その昔にはアレキサンダー大王をはじめ、チンギス・ハン、さらに英国やソ連、米国と大国が支配することを試みるも、どんな力にも屈しなかったアフガンだ。いくらしたたかな中国とはいえ、さじ加減を間違えたら最後、アフガンから手痛い報復を受ける可能性も大きいはずだ。
「ソ連が10年、米国が20年かけてもアフガンを制することができなかったように、この国には民主主義も全体主義も根付かない。そんなアフガンと今後中国がどう付き合っていくのかを世界が注視しています」(前出のジャーナリスト)
そして、そのアフガンを現在、掌握しているのがタリバンだ。前出のジャーナリストが続ける。
「実は世界に流通している違反薬物の8割はアフガンで栽培されたもので、それらの薬物取引を長年取り仕切ってきたのがタリバンとされています。彼らは支配地域のケシ栽培農家から徴税、それを反政府活動の資金源にしてきたといわれている。中国は今後、こうした薬物が国境を超えて流入することに神経をとがらせており、タリバンが会見で公約した『薬物の生産も取引もしない』という言葉が守られなければ、両国が”一触即発“の関係となる可能性もありますね」
まさにハイリスクハイリターン。米軍撤収が中国に与える影響はいかに……。
(灯倫太郎)