凶暴化する異常気象「次の大被害は全国【緑が丘】だ」(1)熱海土石流の傷跡は今も

 コロナの蔓延に追い打ちをかけているのが日本列島で頻発する異常気象だ。8月に入り、「観測史上」を塗り替える熱波が襲えば、滝行のごとく降り続ける大雨に、河川の堤防や山道の山留が決壊する災害が続発。山間部や平野部を問わない天災は、「新たな標的」に向けて近づきつつある。

 8月に入り、日本列島に不穏な空気が漂っている。秋雨前線の停滞により、西日本を中心に未曽有の大雨が降ると警戒が呼びかけられたかと思えば、夏の暑さもヒートアップ。新潟が40度近くの最高気温を叩き出すなど、〝異常気象ラッシュ〟に見舞われているのだ。果たして、何が起きているのか。お天気キャスターの久保井朝美氏が解説する。

「一連の異常気象は、地球温暖化の影響でしょう。『〇月上旬並み』と表現する『平年値』の数字にも表れています。過去30年のデータから各月ごとの気温や降水量の平均を出す指標で、現在使用しているもの(91年~20年)と昨年まで使用していたもの(81年~10年)を比べても一目瞭然。東日本から沖縄・奄美の地域で、最高気温35度を超える『猛暑日』が4日以上、30度を超える『真夏日』が3日以上増加しています」

 広い範囲で波状的に高温が続く殺人的な「熱波」が来襲したのも、今年の異常気象を印象付ける事態になっている。久保井氏が続ける。

「北海道は札幌で21年ぶりに猛暑日を記録するなど、記録的な暑さでした。熱い空気が山から降りてくるフェーン現象によって、例年1~2日で引く高い気温が4~5日続きました」

 当然、地面や海面の温度が上がれば、上空に漂う寒気との温度差が生じ、降雨現象が発生する。しかし、「夕立」や「にわか雨」といった言葉はもはや死語同然。もっぱら「ゲリラ豪雨」により近年、複数の死者が出る大惨事が頻発しているのも「この空と地面」の極端な温度差が日本列島を覆い常態化しているからにほかならない。

「ゲリラ豪雨や台風に限らず、1時間に50㍉以上の『非常に激しい雨』の降るケースは全国的に増えています」(久保井氏)

 7月3日に発生した静岡県熱海市伊豆山地区の土石流も例外ではない。全国紙社会部デスクによれば、

「熱海市で記録的な大雨が続いていました。6月30日夕方から降り始めた雨は3日正午までに389ミリを観測。7月の平年降水量242.5ミリをわずか3日程度で超える、とんでもない雨量です。伊豆山の中腹から崩落した土石流は、逢初川を海まで2キロにわたって流れ、約130軒の住宅をのみ込み、23人の命を奪いました。現在も行方不明者の捜索は継続中です」

 被災から1カ月経っても伊豆山地区の傷跡は癒えない。それどころか「土石流は天災ではなく人災だ!」と憤る地元の声が日増しに高まり、ついには被災住民の損害賠償訴訟に発展した。

「今回の土石流は異臭を放つヘドロだよ。絶対、自然のものじゃない。県の調査によれば、土砂の97%が発生地点に小田原の不動産屋が造成した盛り土だというじゃないか。あれがなければ、ここまで被害は拡大しなかったはずだよ」(地元住民)

 熱海の災害に限らず、山間部の宅地開発と木材伐採などの乱開発による地盤の不安定化は全国的に広く見られる光景なだけに、もはや対岸の火事ではない。

*「週刊アサヒ芸能」8月26日号より。(2)につづく

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