住居だけではない。人生の余生を長閑に過ごす特別養護老人ホーム選びについても、立地を真剣に考えるべき時代になりつつある。
「00年前後に建てられた施設は危険度が高い。土砂災害のハザードマップが作られたのは01年の土砂災害防止法の施行以降。水害については05年の水防法改正からでした。昨年の九州北部豪雨で被害に遭った熊本県球磨村の『千寿園』の設立は99年。今でこそ『土石流危険渓流』と『浸水深20メーター』のエリアですが、設立当時は何の注意喚起もなかったはずです」(山梨大学工学部土木環境工学科防災研究室・鈴木猛康教授)
こうしたグレーゾーンの老人ホームへの入居は、危険と隣り合わせであることを知っておく必要がある。
加えて、巨大地震同様、建物や社会インフラの老朽化が進んでいる箇所も少なくない。鈴木教授は意外な「盲点」も指摘する。
「ブロック塀には注意を払った方がいいでしょう。経年劣化や雨風の浸水によってモロくなっています。18年の大阪北部地震でブロック塀が倒れて小学生が亡くなった事故がありましたが、あまり補修工事は進んでいません。法律違反のものがまかり通っている自治体もあるほどです。インフラとはズレますが、家屋のブロック塀も同様に危険。鉄筋が入っていないものも平気でありますからね。いずれも強風が吹いた拍子に崩れてもおかしくない代物です」(鈴木教授)
ゲリラ豪雨や殺人熱波は、不可避な天災なだけに、日頃からの備えを心がけたい。
*「週刊アサヒ芸能」8月26日号より