8月11日(日本時間12日)のブルージェイズ戦で、大谷翔平選手が14試合ぶりに快音を響かせた。それと同時に同試合を取材中だった米メディアが頭を抱えて始めた。「どう評価すればいいんだ?」――。
「気の早い話ですが、米野球ファンの関心がMVPにも集まってきました。ア・リーグはブルージェイズのウラジミール・ゲレーロ・ジュニアか、大谷翔平の一騎討ちになると予想されています」(在米ライター)
そのMVP候補の2人が直接対決するということで、同カードが注目されたそうだ。大谷が選出されれば、日本人として2001年のイチロー以来の快挙。二刀流という付加価値もプラス要素となるだろう。しかし、MVPは米記者投票である。また、二刀流が選考対象となった前例がない。
「前日のダブルヘッダー第1試合、ブルージェイズの失策で大谷が出塁すると、一塁手のゲレーロ・ジュニアと仲良さそうに話をしていました」(同前)
近年のMVP投票では、いくつかの傾向も見られるそうだ。
本塁打、打点、打率の打撃3部門が投票に直接影響したのは、コロナ禍で60試合しか行われなかった昨季だけ。むしろ、OPSやWARといったセイバーメトリクスによる打者評価の指数や所属チームの勝利数のほうが“加点”されるという。
「OPSは出塁率と長打率を足したもの、WARは同ポジションの別選手と比べてチームに何勝を上積みできるかを表した数値です。OPSではゲレーロが上、WARでは大谷が上。だから、米記者陣は悩んでいるんです」(現地関係者)
16年、マイク・トラウト(エンゼルス)とレッドソックスのムーキー・ベッツ(現ドジャース)、19年、トラウトとアレックス・ブレグマン(アストロズ)のMVP争いはハイレベルな成績をおさめた者同士の“決戦”となった。しかし、16年のトラウトの受賞はWARが決め手となり、甲乙のつけられなかった19年は「トラウトが28試合も欠場したのに、WARが4位。ブレグマンは同1位だがチーム貢献度としてはトラウトが上」と判断された。また、17年はアストロズのホセ・アルトゥーベとヤンキースのアーロン・ジャッジで争われたが、「WAR1位はジャッジ。でも、アストロズの躍進は無視できない」とし、チーム貢献度ということでアルトゥーベが選ばれている。
米記者団が投票の基準とするのはセイバーメトリクスの数字であり、その差がわずかだった場合にチームの成績が加味されるようだ。
「チームの順位が今年のMVP投票に影響した場合、エンゼルスは完全に優勝争いから脱落しているのに対し、ゲレーロ・ジュニアのブルージェイズはワイルドカード争いに辛うじて残っており、終盤戦の勝敗によっては、大谷不利となります」(同前)
大谷がMVP争いで敗れたときは、“エンゼルスの連帯責任”となるだろう。
(スポーツライター・飯山満)