コロナ「完結葬」は究極の「手間いらず永代供養」(2)意外性がある利用者の「理由」

 この取次店との異色タッグにより、現在は京阪神地区で完結葬を実施。平均して週に2件のペースで依頼があるという。では、申し込みから葬儀までの手順はどうなっているのか。

「故人が亡くなると、取次店から完結葬仏教普及会に電話があります。すぐに遺族に連絡して、先に戒名(3文字)を決める。遺族の方から、本人の趣味・嗜好を僧侶がリサーチ。要望を伺いながら、名前の一文字を入れてもいいか、なども聞き取ります」(釈清浄氏)

 そして葬儀会社から日時、場所の連絡がくると、僧侶が当日、火葬場で遺族と顔を合わせることになる。釈清浄氏は続けて、

「読経、法話の後に焼けた遺骨を寺に持って帰り、七回忌まで手厚く法要して、最後は合祀墓に納骨する。宗派も問いませんし、数々の法要には遺族も自由に参加できます。また、完結葬を申し込んでいただいた場合、その前の火葬は別料金になりますが、これも12万円で行えるようにしました」

 通常、火葬、読経、戒名、法要、納骨を個別に行えば、費用は数十万円単位で膨らんでいく。それが完結葬を選ぶことにより、亡くなった直後から納骨に至るまで最大24万円で完結するという、まさに究極の「手間いらず永代供養」と言える。

 完結葬を選ぶ遺族の理由は様々だ。火葬場で遺族に法話を説く、浄土真宗本願寺派の女性僧侶で布教使の釈真見氏が明かすには、

「経済的な理由や、身寄りがなかったり、ひとり暮らしの故人を少人数の家族や友人が送るというイメージを持っていましたが、必ずしもそうではなく、意外性がありました」

 若くして自死した人、子供が嫁いだ娘だけしかおらず諸事情で親の葬儀ができずお墓に入れられない、というケースも増えている。

「読経した後の待合室で遺族にお話をするんですが、完結葬の場合、通夜などを経ず、待ったなしで遺体を焼かれて心の準備もできていない。皆さん、本当に悲しみが深いんです。中には号泣されたり、故人の死を認められずポツンとしていたり。『わしは仏教なんか知らんわ!』と反発される方もいます。それも全て受け止め、年齢や死因を加味しながらいろんな法話をします。『分骨した遺骨の祀り方は?』『魂は家に来ますか』などの質問にも答えているうち、あっという間に1時間以上が経ちますね」(釈真見氏)

 悲しみをともに分かち合い、肉体は骨になるけれど、魂は阿弥陀如来の働きで仏になる。それに感謝するため、故人に会えたことにありがとうございましたと手を合わせて、送ってください─。そう伝えることによって、僧侶が遺骨を持って帰る頃には、遺族も合掌をしながら見送るという。

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