コロナ「予言的中作家」が第2の「重大警告」(3)世界的惨事を回避するヒント

 小説は実際のデータに基づいてストーリーが構築されているため、読み進めていくうちに現実世界と激しくリンクする。フィクションとはいえ、物語通りの未来が訪れると考えうる、正確かつ深刻な予言性を帯びているのだ。

「日本は過去の技術を捨てきれない国。それに尽きると思う。ゼロから始めることができないジレンマに陥っている」(高嶋氏)

 ここで気になるのが、小説内でもキーワードとなっている中国の動向だ。中国は35年を目処に新車販売の半分をEV、残り半分をハイブリッド車を含む環境対応車にすると、昨年末、世界に向けて発表した。人口14億人の中国市場は実に魅力的な一方で、共産党の一党独裁国家である。中国に追随しても、いつ手のひらを返すか分からない。10月13日にはホンダが30年までに中国内で販売する新車を全てEVにすると発表したが、何らかの意図があって、前倒しで発表したと思われている。

 とはいえ、日本の自動車メーカーは一枚岩ではない。トヨタの豊田章男社長は「EVだけを称賛し、製造業は時代遅れ」という偏重に反論。ハイブリッドが規制された場合、「日本の車は輸出できなくなる。雇用喪失にも繫がる」と苦言を呈し、将来的にEVによって電力不足に陥るとも提起した。その背景に見え隠れするのは、中国やインド市場への意識だ。

「電力不足というのも正しいんです。基本的には二酸化炭素を車が出すか、発電所が出すかの違い。全車EVとなればかなりの電力が必要で、火力発電や自然エネルギー、原子力をフル稼働させても足りないのは事実。ただし、世界の考え方はEVにしても『理屈』じゃない。『流れ』なんですよ。この感覚が日本人には分からない」(高嶋氏)

 本格的なEVの社会を目指すにはインフラ、つまり充電スタンドが町中にいる。現状を鑑みると、日本はこの分野においても周回遅れだ。しかし、高嶋氏は解決策をこう考える。

「送電ロスを回避するには、電気の地産地消がベスト。電気自動車は移動手段だけにとどめず、各家庭の蓄電池としても使う。自宅の屋根や壁にソーラーパネルをつけて、車を使わない時間に蓄電池に貯めておいて、家庭でそれを使う。自家発電で足りなければ、スーパーなどの充電できる環境で充電すればいい」

 地球温暖化阻止、それに伴うEVへの移行には一刻の猶予もない。岸田総理はCOP26で「この10年が勝負。30年までに温室効果ガス排出量を13年比で46%削減」と演説したものの、化石燃料の火力発電を残す緩和策だったため、またしても化石賞を受賞。同時に「50年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出ゼロ)実現」を掲げるが、現状を見れば、それも悠長な話─。高嶋氏の「予言」は、そう示しているのだ。

高嶋哲夫(たかしま・てつお)1949年7月7日、岡山県玉野市生まれ。慶應義塾大学工学部卒。同大学院修士課程を経て、日本原子力研究所研究員。1979年には日本原子力学会技術賞受賞。カリフォルニア大学に留学し、帰国後に作家に転身。文学のみならず、防災・エネルギー・教育関連での提言も評価が高い

*「週刊アサヒ芸能」11月18日号より

ライフ