コロナ「予言的中作家」が第2の「重大警告」(1)ハイブリッド車が全面禁止に

 地球温暖化によって極地の氷は溶け、尋常ならざる気象による自然災害が毎年のように襲ってくる。暗雲垂れこめる人類の近未来はどうなっていくのか。それを克明に「予言」するのは、世界に蔓延するコロナウイルスの発生を言い当てた人物だった─。

 地球温暖化の礎となる気候変動の予測モデルを開発した真鍋淑郎氏(プリンストン大学上席研究員)がノーベル物理学賞を受賞したのは記憶に新しい。明らかになったのは、二酸化炭素の排出量と気温上昇の因果関係だ。今では常識的に語られる地球温暖化の要因を、約30年前の研究でいち早く結論付けていた。

「地球科学分野の研究がノーベル賞を受賞するのは初めてのことで、気象関係者を大いに驚かせました。今、この研究が選考されたのは『世界はもっと地球温暖化に関心を持つべき』というノーベル財団のメッセージが込められているからだと言われます」(科学専門誌ジャーナリスト)

 翻って、作家の高嶋哲夫氏は2010年に発表した小説「首都感染」(講談社)でウイルスが蔓延した社会不安の実態を克明に描き、新型コロナの到来をはるか以前にズバリと予見していた。昨年5月には、週刊アサヒ芸能でも「予言書」と呼ばれる同著を解説。実際のコロナ禍と酷似した描写を読んで驚きを持った人は多かっただろう。

 その高嶋氏が再び、日本の近未来に警鐘を鳴らす「予言書」第2弾を打ち出した。ノーベル賞の発表直前に発刊した「EV」(角川春樹事務所)がそれだ。テーマは「地球温暖化」。そこにガソリン車、電気自動車が深く絡む。

 ここで小説の本編に少し触れてみたい。

 物語はコロナ禍後、平常を取り戻した日本を舞台に始まる。地球温暖化対策として、欧米では35年までに自動車の新車販売が環境対応車のみと規制された。つまり、日本で誕生したハイブリッド車も全面禁止。欧米での新車販売は電気自動車(EV)しか許可されない。ところが日本は自動車産業の保護に固執して判断を先延ばしにし、有効な手立てを打てずにいた。

 そんな中、経産省の自動車課に籍を置く主人公の瀬戸崎啓介が30年を目処に、中国までもが燃料車の新車販売を全面禁止するとの情報を入手する。果たして政治と経済を巻き込んだ日本の自動車産業はどう舵を切るべきか。自動車関連の就業人口は534万人にも上る。判断を誤ると、自動車産業も半導体や家電のように後塵を拝するだけでなく、膨大な就業者が路頭に迷うことになる。そして瀬戸崎は中国をも凌ぐ、世界が驚く策に打って出た─。

 現実に話を戻そう。小説では35年に欧米が環境対応車のみの販売とするが、環境先進国7位のノルウェーは25年をもってガソリン、ディーゼル車の新車販売終了を目標に掲げている。だが想定を上回り、22年4月までに両車の新車販売がゼロに達する見通しだという。イギリスもガソリン、ディーゼル車の販売を30年から、ハイブリッド車は35年から新車販売を禁止すると発表している。

 一方の日本は、EVの新車販売は全体の1.2%(今年8月時点)。環境に対する意識の差は数字にも如実に現れていた。

高嶋哲夫(たかしま・てつお)1949年7月7日、岡山県玉野市生まれ。慶應義塾大学工学部卒。同大学院修士課程を経て、日本原子力研究所研究員。1979年には日本原子力学会技術賞受賞。カリフォルニア大学に留学し、帰国後に作家に転身。文学のみならず、防災・エネルギー・教育関連での提言も評価が高い

*「週刊アサヒ芸能」11月18日号より。(2)につづく

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