コロナ「完結葬」は究極の「手間いらず永代供養」(1)志村けん葬儀の流れを進化

 時代と共に葬儀のスタンダードは変遷していくが、殊にコロナの蔓延は、それまでの常識を根底から覆した。あらゆる過程を省略した「ただ火葬するだけ」が主流となっているが、そこへ新たに「究極版」とも言えるシステムが登場したのである。

「昨今、僧侶の勤めがおざなりになっています。僧侶の役目はお経をあげることだけでなく、法話(仏の話)をして遺族の方が心豊かに生きていくようにすること。しかし今、宗教離れが進んで僧侶が話をできる場は葬儀の場だけです。さらに1日葬などが主流になり、法話ができる時間がない。それならば、遺体を荼毘に付すまでの2時間近くの間に20分、法話をさせてもらえたらと考えました」

 こう話すのは、浄土真宗本願寺派の僧侶、釈清浄氏である。

「法話をさせていただくからには、遺族の方に心(経済的な)の負担はさせたくない。それならお布施も安くしよう、と」

 そうして発案したのが「完結葬」なる新システムだった。

 近年の終活ブームにあって、多様化している葬儀形態。そしてコロナの蔓延により、一般的な葬儀がやりにくい風潮が強くなったことで、一気に主流化したのが「直葬」である。これは通夜、告別式を行わず、納棺後すぐに火葬する葬儀のことで、

「昨年5月には、直葬が葬儀全体の7割を超えました。ドリフターズの志村けんさんがコロナで亡くなった際も、遺族も僧侶も立ち会わない、告別式もない。そうしたことがまかり通るようになってしまった。世間も『直葬でいいじゃないか』と。もうその流れを止めることは難しい」(釈清浄氏)

 完結葬はいわば、この直葬の進化系であり、火葬のみで終了する直葬で、僧侶が読経(もちろん法話も)。戒名を授け、その後の四十九日、一周忌や三回忌、七回忌までの法要に加え、納骨までをサポートする。これら全てを含めた料金(お布施)がなんと12万円ポッキリ、破格の安値だというのだ。

 釈清浄氏は法話の必要性に加えて、さらにこんなきっかけもあった、と語る。

「福祉関係者や老人ホーム、遺品整理会社の依頼で魂抜き(墓から遺骨を出したり、仏壇を処分する際に行う供養)に呼ばれるのですが、遺骨がよく出てくるのです。遺骨を持っていた人は、なんとかしてお墓に入れたかったが、そうはできなかった。そういう無念を汲み取って、法要をしてから合祀してあげたいとの要望もありました。完結葬では、合祀墓に遺骨を入れることにしています」

 釈氏は、19年8月に「完結葬仏教普及会」を発足させ、きちんと法話のできるベテラン僧侶や賛同寺院を確保。そして、これまでの葬儀と大きく異なるのが、完結葬を紹介すると同時に受付窓口にもなる「取次店」というシステムである。例えば広告代理店、遺品整理会社、人材派遣会社、ポスティング業者、日本語学校などが協力している。

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