厚生労働省と経済産業省は、7月29日に「新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドライン」を発表した。
同ガイドラインは、国立感染症研究所、葬祭関係団体、日本医師会、東京都らが作成に協力。万全のウイルス感染対策をすることが大前提ではあるものの、新型コロナ感染による死亡者と遺族の対面方法などが記載されたものになっている。しかし、全ての葬儀業者がそのガイドラインどおり、遺族との対面を可能にしているわけではない。葬送ジャーナリストの碑文谷創氏は次のように語る。
「現段階でもまだ少数ではありますが、窓ガラス越しなどを含め、故人と対面できるよう努める病院や葬儀社はあります。関係者自身が感染危機にさらされる恐怖については理解できますが、感染対策をどうすべきか見えてきた今、私個人としては葬祭従事者が“エッセンシャル(必要不可欠な)ワーカー”としての自覚を持って、冷静な対処をし、遺族感情に沿う形で死者を弔う手助けをしてほしいと思っています」
新型コロナによる国内の死亡者は、8月21日時点で1157人にも上る。今後、全ての遺族が心情的に納得できる別れ方や葬儀が実現できるよう、医療従事者や葬儀業界が徐々にソフトランディングしていければ、それが理想と言えるだろう。
とはいえ、現実的には、それがかなわないケースも多々ある。それに、たとえ新型コロナに感染していなくても、このコロナ禍で、いざ葬儀となれば「3密回避」や「県をまたいでの移動」など、悲しみと同時に頭を悩ませることが一気に降りかかってくるのだ。
「重要なのは遺族らが事実を受け止めるために、いかにして故人に寄り添って充実した時間を過ごせるか。ご存じない方も多いですが、日本では少なくない地域で『骨葬』の文化が根づいています。遺体ではなく、遺骨で葬儀をあげてもいいんです」(碑文谷氏)
故人がどのような状態であれ、弔いの気持ちこそが欠かせない、大切な前提ということだ。また「いったん家族だけで火葬し『お別れ会』という形をとってもいい」として、碑文谷氏がこう続ける。
「遠方や高齢などの理由から弔問に来られない人がいるなら、最近大きく注目される、インターネットで葬儀が中継される『オンライン葬儀』のサービスを利用してもいいし、香典を遺族に渡すために郵送したって、失礼なことなどありません。状況に応じて葬儀の形は変わっても、ゆっくりと故人との別れの時間を作ってほしいと思います」
8月20日、政府・新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長が「全国的な流行はピークに達したとみられる」と発言した。その言葉どおり、このまま終息に向かい、コロナ禍の「葬儀パニック」も収まることを切に願うばかりだ。