葬儀会社関係者が、新型コロナで家族を失った遺族の悲痛な叫びを明かす。
「『納体袋で密封すれば遺体から感染することはない。だからどうしても葬儀を行いたい。そしてできることなら、手袋やフェイスガードで完全防備するので、最後にひと目でも対面したい』と、よく懇願されます。しかし葬儀は死後3、4日たって行うことが多い。当然、遺体の損傷が進みます。みだりに遺体に触れられないということは『死化粧』を施すこともできないということ。そうした状態のご遺体を遺族の方が見てしまうと、逆に心に傷を負いかねません。残念ですが、あきらめてもらうほかありません」
また、今年7月に近親者を亡くした都内在住の50代男性も、新型コロナの影響をかんがみ、葬儀を行わない選択をしたという。
「結局、葬儀の場が『密』になって、クラスターが起こらないともかぎりません。遠方の親族には、東京への長距離移動に難色を示す人もいましたし‥‥」
4月上旬には、都内の曹洞宗寺院に在籍する70代僧侶がコロナ感染で死亡したことも報じられた。「感染経路は不明」とされながらも、遺族や寺院関係者の間では「緊急事態宣言前に出席した葬儀が感染源になった」と疑う向きは決して少なくなかったという。
いまだ全国的に広がりを見せている新型コロナウイルス。「正体不明の殺人ウイルス」であった初期段階に比べ、現在は手洗いや消毒など、感染拡大防止の対策も認知されてきた。しかしそれでも自衛のため、葬儀を行わない選択をする遺族が増えているのだ。
「葬儀業界としては大打撃ですね。そもそも、特に都心部での核家族の増加、あるいは不況などによる社葬や大規模葬儀の減少などの原因から、近年は葬儀の縮小化が進んでいました。そこへコロナの感染爆発が拍車をかけた格好です」(葬儀業者社員)
先細りする葬儀業界ではさまざまな「苦肉の策」を講じざるをえなくなっており、
「弔問のための時間を長く取って、参列者が『密』にならないようにする。焼香台はソーシャルディスタンスを厳守する。『通夜ぶるまい』を行わず、持ち帰り用の弁当を用意するなど、対応に追われています。しかし葬儀の件数自体が激減しているので、食事を提供していた飲食業者や、返礼品業者などには、経営が大きく傾いてしまったところも出てきました」(葬儀業者社員)
遺族、業者、病院、寺院‥‥自粛の末、今なお、携わる全ての人がコロナ禍の「葬儀パニック」に襲われ続けているのが現状なのである。