巨人の梶谷が左太もも裏を痛めて5月25日に出場選手登録を抹消された。
DeNAからFAで巨人に移籍。正直、ここまでの活躍は予想外やった。1番打者で打率3割を上回り、盗塁数10もリーグトップ。「やればできるやんか」とはつらつとしたプレーを見直した矢先のパンク。23日の中日戦(バンテリンドーム)の右翼の守備でスライディングキャッチをした際に「違和感」を訴えて交代となった。
いつも言うように、主力選手のケガがチームに一番迷惑をかける。巨人はただでさえ、坂本を欠く苦しいオーダーで、原監督の頭の痛いところ。「違和感」という発表なので、詳しい症状はよく分からない。厳しい言い方をすると、ケガするのも実力のうち。普段から自分の体の状態を把握していれば、急にプチっといくことはない。
僕は他の選手よりグラウンドを走り回ったほうやけど、現役時代に肉離れなんかしたことがない。予兆を感じたら自分でケアしていた。ベンチに戻って座っている時に、ボールでゴリゴリと自分でマッサージしていた。トレーナーにほぐしてもらうより、これが一番効果的やった。それと、アップ中からスパイクを履いて、普段から筋肉を鍛えていた。じっくり、ゆっくり鍛えていれば、肉離れは防げるはずやけどな。
梶谷の離脱でセ・リーグの盗塁王争いは、阪神近本がおのずから抜け出すことになると思う。でも交流戦前の段階で9というのはあまりに寂しい数字。それに比べると、パ・リーグは走れる選手が増えてきて、盗塁王争いも面白くなってきた。西武のルーキーの若林は46試合で20盗塁に到達。辻監督の理想の1番打者に近づいている。
パ・リーグの野球はDH制ということもあって、初回無死一塁からバントという攻撃は少ない。2点、3点を奪いに行くためには。バントより盗塁となる。辻監督も「福本さんのように、出たら走れるいい1番打者が育ってほしい」と以前から話していた。金子は足は速いが打撃が弱く、1番の役割は果たせなかった。若林は打撃でも2割8分前後と今のところ安定している。このペースで行けば、70〜80盗塁は狙える。
もう一人、楽しみなのが日本ハムのドラフト2位ルーキーの五十幡。キャンプで故障して出遅れたけど、5月に入って1軍に昇格。1番打者として、23日の西武戦ではプロ初ホームランも放った。関係者から「福本さんに走り方が似ている」と開幕前に教えてもらって、注目していた選手。確かに走る時の前傾姿勢も似ている。中学時代、陸上の全国大会であのサニブラウンに買って優勝したスピードは本物やな。入団会見では僕のシーズン106盗塁と盗塁王13度を塗り替えるとの目標も掲げたという。「名前を出してくれてありがとう」と言いたい。大きな野望を持つのはいいこと。ぜひ新記録を目指して頑張ってもらいたい。
盗塁王の本命、ソフトバンク周東は肝心の打撃が今ひとつ。打率も2割を上回るのがやっとの数字で、なかなか走る機会が増えてこない。やっぱり盗塁を増やす最大の秘訣は出塁率を上げること。それでも交流戦前の段階で14盗塁と、若林に大きく離されず食いついている。昨季の経験もこれからの争いで生きてくるはず。久々のハイレベルなパ・リーグの盗塁王争いを楽しみにしたい。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。