新たに流行しているネットスラング「チー牛」。「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします」とのセリフと、メガネをかけた男性のイラストが元ネタ。以前から、ある種の男性のタイプを表す言葉としてネット上で出回っていたが、今年に入り爆発的に流行化。ついには大手ニュースサイトでも取り上げられるまでとなった。ニュース内では「チー牛」の意味として「いわゆる『陰キャ』という言葉に近い。こちらは引っ込み思案で内気な人を指す言葉で、時にネット上などでは他人を『地味でイケてない人間だ』としてレッテルを貼る際にも用いられる」と説明され、その言葉が生まれた書き込みから、ネット上でネタとして広まる経緯を記事にしている。
しかし実はこの「チー牛」という言葉、一部のニュースサイトで説明されているような「地味な人物を揶揄する」といった程度のユルい言葉ではない。ネットスラングや炎上に詳しいウェブ系ライターに話を聞いた。
「大手ニュースサイトではこの言葉の起源を『5ちゃんねるの掲示板「なんでも実況(ジュピター)」で18年7月19日にとあるスレッドに投稿された書き込み』とピンポイントで言及しています。ではその書き込みはいかなるものであったかというと、件のイラストを添付して『就労移行支援で面白かったのは利用者の若い男が皆同じ顔をしてた事』『大人なのに中学生のようで気味悪い』といった内容の書き込みをしています。そしてこの投稿者は同スレにて発達障害との関連性にも言及。つまり、『チー牛』という言葉は、そもそも非常に差別的なニュアンスとともに生み出された言葉なのです。そして、その後の広がりの土壌となったのも発達障害スレでした。そのような経緯を、大手ニュースサイトの担当者が知らないはずはありません。差別の暗部には触れずに、都合のよい上澄みだけを面白おかしく取り上げるという大手のいつものスタイルですね。ネット上のコメント欄でも《どんな顔してたって、牛丼屋で何を注文してもいいだろう》《ネットスラングは知らなきゃ知らないで生活に支障はない。むしろマイナス面のほうが大きくて、この言葉を知ったせいですき家で『チーズ牛丼』食べたいのに注文しづらくなった》《差別的なニュアンスを含むスラングを一般に広めないほうがいいのでは》などと、その弊害を指摘する声が殺到しています」
ニュースメディアならば、そこに潜む差別意識の本質に目を向ける責任もまたあるのではないだろうか。
(オフィスキング)