全国のトラ党にとって、コロナ禍での鬱屈を吹き飛ばす勝利が積み重なっている。4月中の20勝到達はなんと球団初。あの「バックスクリーン3連発」の85年や、「勝ちたいんや!」の03年、最後にペナントを勝ち取った05年は、いずれも開幕ダッシュを決めていた。これならホンマに優勝してまうで~!
GWが一段落した5月11日の段階で24勝10敗2分、勝率なんと7割超えでセ界首位を走る阪神タイガース。
快進撃の理由はいくつも思い当たるが、まずは好調をキープする意外な「発端」から見ていこう。ここ十数年の大半で後塵を拝してきたライバル巨人との関係性が、急展開を迎えたというのだ。セ・リーグ関係者が語る。
「実はこのところ、巨人と阪神が何かとぶつかる局面が増えていたんです。両方とも阪神に軍配が上がりましたが、佐藤輝明(22)をドラ1で競合し、韓国球界で昨季2冠王だったロハス(30)の争奪戦も勃発。他にもセのDH制導入では、賛成の巨人に対し、阪神は反対派の中心となった。最近では、GW中の試合日程の一部延期を主張する巨人と、『ドームなし球場』が本拠地で、あとの過密日程を憂慮し開催を強行したい阪神、という構図でも対立していました」
そして極め付きだったのが「藤浪トレード未遂事件」である。阪神の球団関係者が初めて明かす。
「昨オフ、巨人側から藤浪晋太郎(27)のトレードの打診があったんです。なんぼ不振続きとはいえ生え抜きのスターで、昨季終盤には中継ぎ登板で復調の兆しも見せていましたから、そもそもありえへん話。ただ、その時に原辰徳監督(62)がこう言うたそうなんです。いわく『2~3年したら、大エースにして返してやるから』と。もう、こっちは絶句ですわ。『なんや、その上から目線は!』と」
球団フロントというものは元来、内部で派閥もあれば、足の引っ張り合いも抱える伏魔殿である。だが、この「対巨人」を旗印に、藤原崇起オーナー兼球団社長(69)、谷本修球団副社長兼本部長(56)を中心に、球団を挙げて矢野燿大監督(52)への全面バックアップ体制が整ったというのだ。
外国人の合流がままならず戦力的に誤算が生じた球団も多い中、阪神は開幕から助っ人がフル回転となったのもその一例。フロントが手続きや現場との意思疎通をまめに行った成果と言える。巨人への反骨心が、現場とフロントを一枚岩の戦う集団へと変えたのである。
加えて、藤原社長が矢野監督に長期政権を敷かせてチーム作りを任せたい考えを持っていることが大きいという。
「それが矢野監督にもいい意味で心の余裕を与えているんです。実際キャンプでも、報道陣に対して『どんどん悪口を書いてくれ』と口にして驚かれていた。これまで在阪マスコミの多くは球場への出禁を恐れて提灯記事しか書かず、チームの成長促進によくない影響も与えていた。並行して矢野監督も、去年までは負けが込むと焦って、不可解な采配が見え隠れしていました。それが『今年の矢野さんは違うぞ』ともっぱらです」(スポーツライター)
もちろん指揮官、フロントの心境の変化だけで優勝できるほど、ペナントレースは甘くない。しかし、それでもファンがこれなら「優勝してまうやんか‼」と春先から狂喜できるほど、今季のトラは戦力が充実しているのも間違いないのだ。