昨年、日本のエンタメ界は、アニメ映画『鬼滅の刃』が日本歴代興行収入1位に輝くなど、まさに『鬼滅』一色だった。
ところが、お隣、中国でもここ数年アニメ市場が急成長。なんと3兆円を超える規模で拡大し続けているという。中国在住の情報誌ライターが語る。
「かつての中国アニメと言えば、海外モノのパクリだったり、オリジナルでもストーリー性に難点があるものが多かった。ところが、2009年から中国政府が推進しはじめた『文化産業振興計画』により、異業種の大手やベンチャーなどがこぞって業界になだれ込み、そんな流れを受け、中国アニメ産業が著しい発展を遂げるようになったんです」
5月には”中国版LINE“を運営するIT大手企業テンセントが、浙江省杭州市にアニメを題材にした初のテーマパークをオープン。同テーマパークの題材である中国アニメ「狐妖小紅娘」は、1億5000万人の動画登録を誇る人気アニメで、「縁結びの妖狐ちゃん」というタイトルで日本でも知られているが、同テーマパークは今後段階ごとに拡大させ、数年後には東京ドーム960個分の巨大施設になる予定だという。
前出のライターが続ける。
「ここ数年、中国アニメの世界では『紅き大魚の伝説』『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』『魔道祖師』など、大ヒット作が目白押しですが、なかでも最大のヒット作が、2019年に公開された『ナタ〜魔童降臨〜』でしょう。同作は公開されるや否や大きな話題を呼び、累計興行収入50億人民元を記録。これは日本円に変換すると800億円にも及ぶ金額です。近い将来、『鬼滅の刃』を超える巨大な作品が日本に入ってくるのは、時間の問題かもしれませんね」
とはいえ、近年になってなぜ中国アニメは爆発的成長を遂げることになったのか。前出のライターいわく、その一因となっているのが、「中国企業による日本人アニメーターの大量起用」だという。同氏が続ける。
「実は、中国ではアニメ人気が高まる一方で、海外コンテンツの流通規制が強化されたこともあり、日本アニメの買い控えが始まった。そこで、自社の配信コンテンツを拡充させるため、白羽の矢が立ったのが『日本品質の内製化』だったんです。結果、日本に拠点を作った中国企業による日本人アニメーターの抱え込みが始まったというわけです」
同氏が語るように、実は今、日本のアニメスタジオが中国企業の下請けになるケースが急増し、それらの中国の巨大企業が、日本の制作会社を傘下に置き、豊富な資金力を用いてハイクオリティーなアニメを制作、世界に配信するケースが増えているというのだ。
「市場を拡大したい中国は資金も潤沢で、日本のアニメーターが喉から手が出るほどほしい。中国には『日本の年収の3倍、4倍出しますよ』という企業がゴマンとあると聞きますからね、人材が中国に流れていくのは必然。今後も優秀な日本人アニメ—タ—の引き抜きは、激しさを増すでしょうね」(前出・ライター)
中国アニメが「爆発的成長」で日本を追い越す日も近いかもしれない。
(灯倫太郎)