「鬼滅の刃」興収300億円突破!世界進出を後押しするソニーの“買収劇”

 とうとう鬼滅が300億円の大台に乗せた。公開中の「鬼滅の刃」の映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が、公開から12月13日までの59日で興行収入約302億円を記録したのだ(観客動員数・約2254万人)。これで歴代興行収入ナンバーワンの「千と千尋の神隠し」(2001)の308億円は目と鼻の先で、すぐにでも突破してしまうのは明らかだろう。

 そんなとどまる所を知らない“鬼滅ブーム“なのだが、さらなる朗報が届いている。ソニーがアメリカのアニメ配信会社の「クランチロール」を買収、親会社のAT&Tと10月に最終交渉に入ると伝えられていたものが最終的に決定した。約1222億円の買収劇だ。

 ではなぜこの買収が「鬼滅」にとって朗報かと言うと、

「クランチロールはもともと日本のアニメを配信するサービスを展開している会社。『鬼滅』を制作したアニプレックスはソニーの子会社ですから、今回の買収でソニー・グループは『鬼滅』の世界配信のアイテムを得たことになります」(経済ジャーナリスト)

 アメリカの会社でありながら日本のアニメ配信とは変わった会社だが、もともとは一般のアニメファンが勝手に字幕をつけて動画投稿していた、いわゆる違法サイトだった。06年の立ち上げ以降、アクセスと会員数が急増。さすがに違法投稿はまずいということで、08年にテレビ東京と提携して合法的な配信に切り替えた。そして現在は北米、ヨーロッパ、東南アジア、中南米と、200カ国・地域で6000万人のユーザーを誇るとされる(有料会員200万人)。最初はアニメのみだったコンテンツも、今はドラマやJ−POP、アニソンのPVなどの配信も行っている。なお、基本的に日本からの視聴はできず、日本語の音声に対して英語、スペイン語、ポルトガル語の字幕が対応している。

「さらに16年にはKADOKAWAとも配信の締結を行い、住友商事とアニメ制作支援の投資ファンドを組成するなど、アニメ産業の振興にも力を入れています。昨年にはフランス、ドイツ、スイスで配信サービスを行う会社と提携し、グローバル展開をさらに広げていたところです」(前出・経済ジャーナリスト)

 だから、「鬼滅の刃」に限らず日本のアニメを世界中に届ける術が着々と整いつつあるというわけだ。

 世界中に熱烈なファンがいるジャパニメーションだけに、“鬼滅ブーム”は日本だけの現象ではない。インスタには国籍を問わず炭治郎や禰豆子の仮装写真で溢れている。

 10月16日の日本での封切り以降、10月末にいち早く海外公開された台湾では、公開初日の3日間で4.3億円の興行収入を上げてアニメの新記録を達成した。東南アジアでは来年の頭にかけて順次公開が進んでいるが、その他の地域は未定なところが多い。映画と同時に配信アニメでも世界進出が本格化しそうだ。

(猫間滋)

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