オレ流ならぬ”ボク流”で記者を籠絡/石井一久のゆるゆる采配(3)

 一方、石井監督は1年目から正念場のシーズンとなる。

「一昨年のシーズン、平石洋介監督(40)が久々のAクラス入りとなる3位躍進を成し遂げた。しかし石井GMは『自分の中ではBクラス』と言い放ち、わずか1年で監督交代。昨年の三木監督も4位に甘んじて、やはりたった1年でクビを切られた。それだけに、本人自身の発言がブーメランとなって返ってくるのです。だから、マー君加入で『優勝候補』と下馬評が上がっているが、そのハードルを下げようと必死なんです。キャンプ中、報道陣のプレハブまでみずから足を運び、タイ焼きを差し入れたことがあった。しかも『皆さんでどうぞ。あっためて食べるとおいしいですよ』とトースターまで持ってくる念の入れようでした。メディアの暴走をなんとかコントロールしようと気を遣っているようだった」(スポーツ紙デスク)

 楽天は他にも田尾安志氏(67)、ブラウン氏(58)、大久保博元氏(54)と、計5人の監督がわずか1年という短命に終わっている。

「三木谷オーナーの現場介入は相変わらずです。オーナーの信頼が厚い石井GMが入ったことで、その心配が薄くなったとはいえ、昨年も先発ローテや打線の入れ替えなど、選手起用に注文が入っていた。石井監督がどこまで素人オーナーの意向をはね返せるかが見ものです」(球団関係者)

 全ては結果しだいだが、1年目で背水の陣という状況は変わらない。

 角氏は石井新監督に太鼓判を押す。

「新人監督というが、3年目だと見ています。采配の手腕はともかく、すでにGMとして2年の経験があり、チーム事情には精通している。外から野球を見ると、チームに何が足りていないかなど意外に冷静に見られるものなんです」

 その上で、初監督で大事なのはスタートダッシュだ、として続けた。

「負けが込むと、選手はこの監督で勝てるのかと不安になって個人プレーに走る。そうなると勝率は5割に届かない。全ては最初の15試合で決まるでしょう。かつてはデータを重視して結果を出すノムさんのID野球がはやりましたが、このコロナ禍の不安な時代には、意外とほんわか癒やし系の石井監督の采配が合っているのかもしれませんよ」

「オレ流」の落合監督は4度のリーグ優勝と日本一にも輝き、中日黄金時代を築いた。だが、その後のGM時代は万年Bクラスに低迷している。「ボク流」の石井野球はどんな結果を見せてくれるだろうか。

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