野村氏が「ID野球」を掲げて、30年以上の時が経過した。当然ながら、令和仕様にアップデートされたモノもある。スポーツ紙デスクによれば、
「本拠地の神宮球場に『ホークアイ』というMLBの最新データ解析が導入されました。弾道測定器『トラックマン』に代わる新システムで、球場に設置された8台のカメラから、投球の回転数やフォーム、打球の角度などのデータを得られます。特に、細かいフォームの変化にもいち早く気づくことができるので、先発投手のスタミナ切れのタイミングも可視化されています」
ハイテク機器を用いたデータ解析は、さしずめ進化した〝シン・ID野球〟か。そればかりか、人材育成の方針にも変化が訪れていた。
「さすがに『無視・賞賛・批判』は時代遅れ。ノムラ式のコミュニケーションは誤解を生むこともしばしばでした。それにひきかえ、高津監督から選手を非難するようなコメントは聞こえてこない。〝演出力〟があるだけに選手のモチベーションを維持するのも上手です。去年のペナント後半戦、ロッカールームに直筆メッセージを貼り出したのも選手たちにはグッときたはず。ノムさんが反面教師になっているのかもしれません」(角氏)
もはや、人心掌握術は師匠超えの域に達している。
同様に人たらしの性分でチームをまとめるのは楽天の石井一久監督(48)だ。球界OBが明かす。
「ノムさんは『お前はフロント向きや』と、誰にでも好かれた選手時代の石井監督をこう評していた。この金言を真に受けたから、引退後真っ先に吉本興業に入社してマネジメントの道に進んだのです。実際に、菊池雄星(31)のメジャー行きに暗躍したり、楽天のGMに就任してからも鈴木大地(32)や田中将大(33)の獲得に成功。今や全権監督なのに、お高くとまった素振りもない。フランクに交流してくれるため、スタッフや番記者たちも骨抜きにされていますよ」
師匠に見抜かれた〝寝業師〟の才能を存分に発揮中である。しかしながら、采配面では「ノムラの教え」はどこか忘れ去られている様子。楽天で〝野村再生工場〟の恩恵を受けた野球評論家の山﨑武司氏が指摘する。
「まったく、オヤジのエッセンスが見受けられません。能力のあるタレントが豊富な分、そのポテンシャルに頼りすぎな印象です。チームは開幕からスタートダッシュに成功したのに、交流戦前から低迷している。石井監督が動かないのは後半戦に向けての秘策なのかもしれませんが‥‥」
とはいえ、しっかりと「教え」を強く受け継いでいる部分もあるという。
「西川遥輝(30)の獲得に関してはオヤジの感性に近いものを感じました。塁に出て走れることを1番打者の理想像として掲げていましたからね。昨季、リードオフマンを任されていた辰己涼介(25)や山崎剛(26)では出塁率が低すぎましたからね」(山崎氏)
思えば、西川が調子を落としてからチームは低迷する傾向にあったが‥‥。
*快進撃!シン・ID野球「ノムラの教え」がプロ野球を席巻(3)につづく