年収600万円の求人も!「臭気判定士」は地球環境時代に活きる国家資格

 人間の五感の中で、最もセンサーの開発が遅れていると言われる分野をご存じでしょうか。それは嗅覚。例えば人の接近を知らせる赤外線センサーは視覚、糖度測定器などは味覚といった具合に、機械が感覚器官の代わりを担っていますが、においを測定したりデータ化したりする際には、まだまだ人間の鼻が必要とされています。

 そこでご紹介したいのが「臭気判定士」。臭気を感じるメカニズムや悪臭関連法の知識、臭気の判定技術が問われる国家資格です。

 それでは例題を見てみましょう。

〈問1〉においを感じる際に働く鼻の奥にある細胞の名称は、【1】臭細胞、【2】香細胞、【3】嗅細胞、【4】匂細胞のうちなんという?

〈問2〉悪臭防止法では、不快なにおいの原因となり生活環境を損なう恐れのある物質が指定されていますが、以下のうちそれに含まれない物質はどれ? 【1】アンモニア、【2】硫化水素、【3】トルエン、【4】エタノール

 実際の試験では多肢択一式(マークシート)で出題され、実技試験のような形で嗅覚検査も行われます。例題の答えは〈問1〉が【3】、〈問2〉が【4】となっています。

 筆記試験では「嗅覚概論」「悪臭防止行政」「悪臭測定概論」「分析統計概論」「臭気指数等の測定実務」の5科目があり、トータルで70%以上の正答率が求められます(合格基準は年によって変わります)。私はなんとか合格できましたが、難易度は高め。公式テキストや過去問に載っていない難問が出ることもありますからね。

 嗅覚検査は全問正解が合格条件ですが、それほど優れた嗅覚の持ち主でなくても合格できるでしょう。嗅覚検査で出題されるにおいの例を挙げると「花」「桃」「こげたカラメル」「汗」「排泄物」。後半2つに関しては「いやいや‥‥」と思うかもしれませんが、こうした代表的な悪臭を嗅ぎ分けるのは欠かせない要素と言えます。

 では、臭気をどうやって判定するのでしょうか。

 例えば、あるマンションの住人から「異臭がする」と苦情が寄せられたとします。そこで臭気を測定するわけですが、騒音が「デシベル」で数値化できるのに対して、においには共通の単位がありません。その異臭がどんなにおいか、それがくさいのか良い香りなのかは、人によって感じ方が異なるからです。

 そのため臭気を判定するには、化学物質の濃度などを計測するとともに、何人かの官能試験者ににおいを嗅いでもらって、においの評価を集計し、平均値を導くというアナログな手法が取られているのです。

 こうしたノウハウは、体臭ケア製品を手がける美容業界や工場の運営などに関わる環境測定業務で生かされるでしょう。

 実際に転職サイトを覗いてみると、臭気判定士の需要は多いようで、年収600万円という高収入の求人情報も見受けられました。

 例年の合格率は約30%と狭き門ですが、トライして損はないはずです。

儲かる指数:85

鈴木秀明(すずきひであき)/81年生まれ。東京大学理学部、東京大学公共政策大学院を経て資格アドバイザーに。取得資格数は約700。

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