“楽天ライオンズ”へ――。金銭トレードで東北楽天イーグルスに移籍した炭谷銀仁朗捕手が、いきなりベンチ入りした。トレードが発表されたのが7月4日。翌5日に入団会見が開かれ、そのまま同日の千葉ロッテ戦に出場登録された。
「試合にこそ出ませんでしたが、クリムゾンレッドの新しいユニフォーム姿でチーム練習に参加していました」(スポーツ紙記者)
慌ただしさを感じないでもないが、それも石井一久GM兼監督の期待の表れだろう。しかし、ここにきて、このトレードの内幕と楽天の今後も見えてきた。
「巨人のキャッチャーと言えば『小林誠司がトレードに出されるのではないか?』との憶測がまことしやかに囁かれていました。でも、他球団が狙っていた巨人の捕手は岸田行倫でした。岸田の打撃力には定評があり、『使わないのならくれ!』と複数球団がトレードを申し込んでいたのです」(球界関係者)
「岸田は出せないが、炭谷なら可能性アリ」と見た石井監督の目のつけどころが、今回のトレードにつながったようだ。
「楽天はこれまで若い太田光をスタメンマスクで起用してきました。ただ、太田ではもうひとつ引き出せなかった岸、涌井、田中らのベテランの持ち味を、炭谷の経験値でフォローしていこうとしているのでしょう」(前出・スポーツ紙記者)
炭谷獲得の目的はそれだけではないようだ。このトレード成立と同時に、楽天、西武双方のファンがネット上でつぶやいたのは、楽天球団の“ライオンズ化”。石井監督を筆頭に、岸孝之、涌井秀章、牧田和久、浅村栄斗、金森栄治打撃コーチ、石井貴投手コーチ、奈良原浩内野手走塁コーチ、垣内哲也育成コーチなどライオンズ出身者が多い。フロント、スカウトにも“元西武職員”がいる。そして、チームの内情について聞いてみると、こんな指摘も聞かれた。「炭谷加入で練習スタイルもライオンズ化するのではないか」と…。
「アーリーワークですよ。早出特打ちなどで厳しいノルマを課して自主練習するものですが、西武コーチ時代の大久保博元氏が定着させたと言われています。でも、それでは説明不足で、『そういう練習をやりたい』と大久保コーチに申し出て行動に移したのが炭谷だった。それに他の西武選手が追随したというのが実情なんです」(前出・球界関係者)
楽天にも練習熱心な選手は多い。元祖・アーリーワークの炭谷が加われば、早出特打ちなどの自主練習の密度も高まるはずだ。選手の頭数ではなく、こういうライオンズ化なら、地元ファンも大歓迎だろう。
(スポーツライター・飯山満)