次の放出候補は? 巨人・原監督が「格差トレード」連発で起こす“球界革命”

 確かに驚かされた。しかしながら「さもありなん」。3月1日に発表された巨人とヤクルト間の電撃トレードは、そう評していいだろう。周囲の声にも動じず迷いなく手を打ち続ける、名将・策士の「究極野望」とは‥‥。

 巨人・田口麗斗(25)とヤクルト・廣岡大志(23)のトレードは、周囲の話を総合すると、前日2月28日の時点で両球団が大筋合意。トレードは巨人側から持ちかけられ、わずか5日ほどで決着に至ったという。

「ヤクルト側は、編成担当者が思わず巨人サイドに『本当に田口でいいのか?』と何度も確認したほどだった」(ヤクルトOB)

 ヤクルトにとっては、まさに渡りに船。トントン拍子で話は進んでいったようだ。このプランを水面下で企てたのは言うまでもなく、全権指揮官を担う巨人・原辰徳監督(62)である。

 近年の巨人では原監督主導の下、かつての姿勢からはおよそ想像もつかない大胆な編成や人事、改革が次々と仕掛けられている。

 昨年はシーズン途中で澤村拓一(32)をロッテへトレードで放出。交換要員の香月一也(24)との年俸格差は1億4750万円(推定、以下同)もあった。今回の田口と廣岡も5400万円の差があり、球界を揺るがす格差トレードであっても、躊躇なく踏み切っているのだ。

 澤村、田口は安定感を欠くことも多々あったとはいえ、侍ジャパンにも選出された実績十分の選手だが、なぜ‥‥。

「両投手ともに放出決定前には、球団内で多くの反対意見も出ていた。それでも原監督は『飼い殺しは絶対にしない』と断固突っぱねて押し切ったんです。澤村、田口はこのまま現有戦力の中にいても伸び悩む。それならば、必要とされるチームに行って思う存分真価を発揮し、成長してほしい。率直に原監督は、そう考えたのです」(球団関係者)

 過去に何度も繰り返されてきたのは、余剰戦力にもかかわらず他球団で活躍されたら困るからと、チームに塩漬けにしておくこと。そんな巨人の悪しき慣例を打破しようという狙いがあるのだという。

「その先に見据えているのはもちろん、打倒ソフトバンク。日本シリーズで2年連続となる屈辱の4連敗を喫した怨敵を倒すためには『何か』を変えなければいけません。そのひとつが飼い殺しの撤廃。短絡的な損得勘定ではなく、埋もれたままの、戦力にならない選手を意地とメンツだけで抱えずに『ダイヤモンドになり得る原石』と交換したほうがはるかに有益と踏んだのです」(球団関係者)

 澤村、田口クラスの高年俸選手でさえも容赦なく放出し、選手たちには危機感を植え付ける。百戦錬磨の指揮官の頭の中にはそんな計算が働いているのだろう。だからこそ、今シーズンを迎えるにあたって「今後の我々にはチーム力だけではなく『個』の力のレベルアップも重要になってくる」と繰り返し述べているのだ。

「次の格差トレード候補の筆頭は捕手の小林誠司(31)だともっぱらです。複数年契約を結んでいますが、100%の安心材料とはなりません。尻に火がついた小林が死ぬ気で17年の第4回WBC時のような活躍を見せれば、それこそ原監督の狙い通りとなるでしょう」(球団関係者)

 ただし、原監督は打倒ソフトバンクばかりに傾注しているわけではなかった。球界全体の活性化を見据えているというのである。

 原監督と昵懇の関係にある球界関係者が解説する。

「昨季途中から澤村が救世主的活躍でロッテのCS進出に貢献したのは言うまでもなく、田口に関しても、投手力の弱いヤクルトに対し、同一リーグでありながら自分たちから売り込みをかけている。忘れてならないのが昨年11月、巨人からライバル球団である阪神に金銭トレードで移籍した山本泰寛(27)だ。阪神からの獲得打診を巨人があっさり快諾し、実に30年ぶりに巨人から阪神への移籍が実現することになった。山本は今、虎の正遊撃手のダークホースとしてメキメキ頭角を現している。巨人でくすぶっていた山本に『欲しがっている球団があるから、頑張って行ってこい』とひそかに背中を押したのでしょう。巨人の長い歴史の中でも、こんな大胆なトレードに次々とゴーサインを出して球界を盛り上げようとする指揮官は原監督だけです」

 思えば、年明けに桑田真澄投手チーフコーチ補佐(52)を急きょ招聘したことも、球界全体を見据えた原流仕掛けのひとつだったのではないか。

「指導者としてチームに必要な人材だったのはもとより、あれほどの大スターが古巣のジャイアンツに帰ってくれば、おのずと注目が集まる。昨今は球界から離れぎみだった高年齢世代のファンも呼び戻そうと、原監督は考えたようだ」(球界関係者)

 その上で、桑田コーチ、阿部慎之助2軍監督(41)と、将来の監督候補が両並びになって帝王学を身につけていけば、原監督は後継者不在で頭を悩ませることもなくなる。

「桑田、阿部のどちらが先にバトンを託されるかは、読売本社やフロントの意向も加味されるから、さすがに不透明だ。ただし、今季で球団との3年契約が最終シーズンとなる原監督が仮にあと1〜2年契約延長したとしても、この第3次政権で巨人の指揮官からは身を引くことでしょう」(球界関係者)

 となれば、ますます原采配から目が離せなくなりそうだ。

※「週刊アサヒ芸能」3月18日号より

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