ステイホームが定着したことで、出前やデリバリーのほか、「現地に行けないのなら、せめてお取り寄せで地方の美味しい食べ物を」とネット通販で食品を購入する機会も増えたはずだ。
ただ、ネット通販の場合、販売サイトに映し出される画像と説明書き、さらには口コミが購入の際の判断材料になるが、「そこに大きな落とし穴がある」とは食品問題に詳しいジャーナリストだ。
「というのも、書き込みの大半は味の評価が中心で、どんな食材や添加物が入っているのかをきちんと説明しているものは少ない。たとえば、スーパーなどで購入する加工食品の場合、消費者は裏に書いてある食品表示でチェックすることができます。ところが、通販の場合、販売サイトで表示する義務がない。つまり、購入する側は、どんな原材料が使われているかわからないまま注文するため、自宅に届いてから裏を見て“こんなものが入っているの?”と驚くケースも少なくありません」
自分で消費する分にはまだマシかもしれない。都内在住の30代の既婚者女性は、お歳暮でのこんな失敗談を明かす。
「義理のお母さんにギフトでお取り寄せグルメを送ったら、めちゃくちゃお怒りの様子で、『こんな添加物まみれのもの送ってきてどういうつもり?』と詰め寄られました。ネットで注文したので、まさかそんな危険な添加物が入っているなんて…。そもそもサイトに添加物なんて表示されてないから、やっぱりデパートに行ってチェックすればよかったと後悔しています」
食品添加物とは色や味を向上させる一方、日持ちをよくするために使われるもので、現在、厚労省が認めている種類は1500以上にも及ぶという。
「もちろん、食品添加物をすべて悪者扱いするつもりはありません。とはいえ、たとえばハムやソーセージといった加工食品の原材料表示で目にする『リン酸塩』。これは、おいしそうな色を付け、食感を良くするものですが、この成分を過剰摂取すると、カルシウムの吸収が抑制され、骨粗鬆症や腎機能の低下、甲状腺機能に悪影響が出る危険性があると言われています。また、通販サイトで常に上位をキープする洋菓子には、マーガリン(植物油)が使用されていますが、マーガリンにはトランス脂肪酸が含まれていて、過剰に摂取すると心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まるとも言われています」(前出・ジャーナリスト)
トランス脂肪酸は、揚げ物や菓子パン、ケーキ、チョコ、スナック菓子のほか、アイスクリームや手巻き寿司のネギトロなどにも含まれているケースもあるが、パッケージの食品表示には「マーガリン」ではなく、ショートニング、ファットスプレッドといった呼称が使われることが多いという。
なかには海外では使用が禁止されている食品添加物も目にする。それがドレッシングやパスタソースなどに含まれている抗菌性たんぱく質の「ナイシン」だ。
「ナイシンの成分は抗生物質のため、過剰摂取し続けると、腸内細菌を一掃して“耐性菌”が生じる危険が指摘されています。そのため例外的に乳製品の保存料として使用されている国はあるものの、多くの国でその使用が禁止となっています。ところが日本では食肉製品をはじめ、パスタソース、ドレッシング、洋菓子などさまざまな食品に保存料として使われているのが現状。厚労省としては、ごく微量なら問題ないという判断なのでしょうが、世界基準に照らせば日本は“オーガニック後進国”とも言えるかもしれません」(前出・ジャーナリスト)
コロナ禍のいまだからこそ、「食と安全」について考え直すべきかもしれない。
(灯倫太郎)
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