昨年は年間204勝を記録し、4年連続の全国リーディングに輝いたC・ルメール騎手。競馬ファンの信頼も厚く、常に上位人気に支持されているが、当然、全レースで勝利するわけではない。「買い時」「消し時」を見極めることが重要なのだ。バッチリ儲かる「ルメール馬券術」を指南しよう。
例年はスロースターターのルメール(41)だが、今年は1月24日終了時点で3週連続重賞勝利、勝利数を16に伸ばし、早くも全国リーディング首位を走る好スタートを切った。好調の理由をスポーツ紙記者が語る。
「今年はコロナ禍のため年末年始のバカンスを取りやめたので、例年より1週間早くレースに参戦しています。昨年末の有馬記念が12月27日と遅かったこともあり『休みボケ』もなく、勝負勘を持続したまま年を越せたのが要因のひとつ。そしてもうひとつは、アーモンドアイの引退です。8冠を達成したジャパンCの勝利騎手インタビューで涙を見せていましたが、厩舎の関係者も『まさか泣くとは思わなかった』と口を揃えていました。相当のプレッシャーだったようで、それから解放されたのも大きい」
昨年は勝率26.1%、3着内率が54.5%と、半数以上のレースで馬券になっているルメール。今年も3週を終えた時点で27.6%(3着内率44.8%)の高水準を維持しているが、見方を変えれば、約半数のレースで馬券圏外に沈んでいるわけだ。
そこで今回は、週刊アサヒ芸能連載でおなじみの伊吹雅也氏によるデータ分析(18年1月27日~21年1月24日のJRAのレース、出走回数30回以上)をもとに「買い時」と「消し時」を見極めていきたい。まずは「コース別ベスト3」について伊吹氏が解説する。
「3着内率を基準にベスト3、ワースト3を出しました。ルメール騎手が最も得意としているのが東京芝2400メートル。次いで中山芝2000メートルです。ちなみに東京芝2300メートル以上は3着内率67.8%(複勝回収率93%)と期待値も高く、3位の東京ダ2100メートルは複勝回収率が119%。複勝を買い続けるだけで簡単に儲かるぐらいの好成績です」
関東遠征時の中・長距離戦は黙って買いだ。
一方の「コース別ワースト3」では、ダートの短距離戦が1、2位となった。「1位は阪神ダ1400メートルで2位が中山ダ1200メートル。また、出走回数が21回と少ないですが、阪神ダ1200メートルの3着内率も42.9%と悪いですね。得意コースもいくつかあるとはいえ、中央場所のダート戦は基本的に過信禁物とみておいたほうがいいかもしれません」(伊吹氏)
今年の成績を見ても、芝では3着内率53.8%に対してダートは37.5%。しかも1番人気を15回背負って、9回も馬券圏外に飛ばしているのだ。専門紙トラックマンが話す。
「ダート戦では砂をかぶるだけでヤル気を失う馬もいますし、短距離戦ではまぐれもあり、穴馬の激走も起こりやすい。逃げ馬ならともかく、差し、追い込み馬の場合は、妙味を求めて消す手もありだと思います」
ローカル場に目を向けると、暑さが苦手なルメールだけに北海道でのデータが並ぶが、今年は京都競馬場が改修工事のため、中京での競馬が増える。
「中京芝の成績はあまりよくない上、ダートも総じて微妙です。特に芝1600メートル以下は、3着内率32.3%(複勝回収率44%)でした」(伊吹氏)
中京開催では得意の芝とはいえ、消す手もありだ。
続いては「調教師」との相性を見てみよう。
「3着内率を見ると、成績がいい厩舎と悪い厩舎の間には2割くらいの差があります。悪いといっても『ルメールにしては』ですから5割前後はあるので、即消しとはいきませんが、より信頼できる連軸を選ぶ上では見逃せない指標です。調教師リーディングの上位陣で相性がいいのは、国枝栄調教師のほか、木村哲也調教師(美浦)も129戦して3着内率59.7%と、まずまずの好成績を収めています」(伊吹氏)
国枝師とのタッグについては、スポーツ紙記者が次のように語る。
「ノーザンファーム生産馬のファーストチョイスはルメールとしています。勝たせたい馬=能力馬にルメールが乗り、調教は国枝師がつける。アーモンドアイがまさにそうでしたが、いわば『勝利の方程式』。2人のタッグは1着付けで厚く狙うのがいいでしょう」
ルメールは関西所属ながら、関東の調教師がベスト3に並んだ理由は、近年、アーモンドアイのローテーションを第一に動いてきた結果。そのため関西の多くの厩舎では、過去3年で起用回数が30回未満というねじれ現象が起きていたのだ。
「関西馬全体との相性はそれほど悪くないのですが、『主戦』と位置づけている厩舎も少なく、参考にしづらい状況です。強いて注目株を挙げるなら、28戦して勝率46.4%(3着内率71.4%)の藤岡健一師。25戦して3着内率48.0%の藤原英昭師は、あまり強調できません」(伊吹氏)
ちなみに藤岡師が管理する馬では、近3走全て1番人気を背負って1着。こちらのタッグも新たな「買い時」となりそうだ。
騎乗機会の半分近くで1番人気、9割近くが3番人気以内に支持されるわけだが「単勝人気別成績」では、興味深い傾向が見て取れるだろう。
「1番人気での勝率は37.0%、2番人気は22.9%ですが、3〜5番人気になると一気に11%台まで落ちます。単勝4番人気以下のレースでは3着内率28.5%(複勝回収率78%)。決して悪くはありませんが、妙味があるとまでは言えませんね」(伊吹氏)
1着固定の馬券は1、2番人気の時だけにしたい。
「競走番号別成績」にも馬券のカギを握る傾向が存在する。大前提として「平場のルメール」を買い目から外すのは、ナンセンスだ。
「データ上、終盤の10R以降で大きく成績が落ち込んでいることがわかります。より格の高いレースだからということもあるでしょうが、これだけハッキリしていると、単純にスタミナの問題である可能性も‥‥。騎乗回数の多い日は、最終レースなどで逆らってみるのもひとつの手です」(伊吹氏)
また「時期」ごとに分析すると、ある「消し時」が見えてくるという。伊吹氏が続ける。
「20年は例年より1Rの成績がいまひとつでした。さらに18~19年も含め、月別に計算すると、8〜10月の1Rが3着内率80.6%(複勝回収率98%)と好成績なのに対して、1〜3月は3着内率57.1%(同80%)と違いがクッキリ出ました。寒い時期は終盤のレースだけではなく、朝イチのレースも評価を下げたいところです」
ルメールは昨年781レースで騎乗しているように、鞍数も多い。それだけに馬のタイプも馬券戦術には重要となる。注目するのは「前走の上がり順位」だ。
「どちらかと言えば末脚を生かすのが得意なので、前走の上がり3ハロンタイム順位が2位以内の馬に限定すると、好走率、特に勝率が大きく跳ね上がります。前走の末脚もチェックしておくと、より信頼できる騎乗馬が見えてくるはずです」(伊吹氏)
ここまでさまざまなデータで分析してきたが、まさにそれを実証するレースがあった。1月23日、中山1Rの未勝利戦である。
ルメールとコンビを組んだのはリュヌダムール。前2走とも2着しており、単勝1.8倍の圧倒的支持を得るものの結果は6着だった。このレースでは、次の「消し材料」が揃っていたのだ。
●ワーストコース2位の中山ダ1200メートル。
●ワースト3位の伊藤圭三師(美浦)。
●1〜3月に勝率が落ちる朝イチの第1R。
●同馬の前走の上がり3ハロンタイム順位が8位。
たとえ1倍台の人気でも、飛ぶ時は飛ぶのだ。
出走するレースの5割~6割で馬券に絡むルメール。馬券戦術的には無視できないだけに、買い時、消し時の傾向をしっかりと頭に叩き込んで、的中率を大幅にアップさせるべし!