東京・新宿区のマンションに住む女性宅玄関前に新聞紙を置き、火をつけたとしてウーバーイーツ配達員の男(29)が1月6日までに、現住建造物等放火未遂の容疑で警視庁に逮捕された。
全国紙社会部記者が語る。
「男は犯行に及ぶ1週間ほど前の昨年11月上旬、乗っていた自転車が女性の自転車と接触。口論となり女性を殴りそのまま立ち去った。ところが、女性が男を追いかけて謝罪させたというんですね。すると、直後から女性の自転車がパンクさせられるなど、嫌がらせが続くようになり、事件当日、自宅の玄関先でしゃがみこんで火をつける男を目撃。今年に入り逮捕となったわけですが、男は、『路上で女性から謝罪を求められ、屈辱感を感じた。自転車をパンクさせても腹の虫がおさまらなかった』と容疑を認める供述をしているようです」
逆恨みの放火などはもってのほか。だが、コロナ禍でフードデリバリー需要が増加する一方、ウーバーイーツ配達員をめぐるトラブルが後を絶たないという。
「昨年5月には、同社配達員と思しき人物が自転車で首都高を走行している動画がアップされ、大騒ぎになりましたが、猛スピードでの走行や信号無視、無灯火などの危険運転は、もはや珍しいことではなくなりました。それどころか、最近はウーバー配達員同士の小競り合いや窃盗事件などが頻発、そちらのほうが問題になっているようです」(前出・社会部記者)
ウーバーイーツ配達員の報酬は変動性で、飲食店からの受取料と客への受け渡し料金、配達の際の移動距離に準じた料金を足したものとなるが、元配達員のAさんはこう話す。
「以前は、注文が集中するピーク時などには報酬が1.5倍ほどになる『ブースト』というボーナスが加算されたのですが、配達員の数が急増したためか、ブーストがほとんど付かなくなった。また、指定された配達回数を達成するともらえる『クエスト』という追加報酬の額も以前より低くなったことで、短距離配達を繰り返して効率良く稼ぎたいと考える人が増えて配達員の一極集中を招くことに…。その結果、配達員同士のライバル意識が高まり、ちょっとした追い抜き行為や接触から小競り合いや路上のケンカ沙汰に発展するケースが急増しているんです」
さらに、四角いウーバーイーツ専用バッグの盗難、通称「ウバッグ狩り」も後を絶たないという。
「かつて専用バッグはパートナーセンターで4000円のデポジットを払って手に入れるのが一般的だったのですが、現在は各自が購入する決まりになっています。ところが、登録を済ませてバッグも購入して、『さあ今日から稼ぐぞ』と思っていたら、配達先の店舗前に置いていたバッグがなくなっていて…。結局、amazonで再びバックを買い直して仕事をスタートする羽目になってしまったんです。バッグ欲しさの盗難というよりも、少しでもライバルを減らしたい同業者の犯行だとにらんでいます」
こう話す配達員のBさんは、盗難被害後に再スタートを切ったものの、競争率の激しさと、他の配達員との小競り合いに嫌気がさし、3カ月ほどで配達員を辞めたという。
「緊急事態宣言の発出で飲食店の営業時間が短縮されてウーバーの需要は増えていますが、働き口を失った人たちが参入してくるのは目に見えています。新人配達員のなかには、店に着いても料理がまだ完成していないことに腹を立てて悪態をつくような連中もいると聞きます。店側がウーバーの配達員に抱くイメージも悪くなりますし、マナーを守ってきたベテランが次々と辞めていく現状を考えると、配達をめぐるトラブルはなくならないでしょうね」(Bさん)
楽に稼げる仕事などそう簡単には見つからないようだ。
(灯倫太郎)