コロナウイルス第3波の襲来に伴い、北海道帯広市の夜の街で大規模な一斉PCR検査がスタートしたのは12月18日。感染リスクが高いとされている、夜の飲食店での陽性者早期発見を促すため、約300人分の検査費用は道の全額負担、自己負担ゼロで行われた。夜の街での感染拡大を阻止する試みは全国的に注目を集めているが、北海道以外の夜の街の検査事情はどうなっているのだろうか。実際にPCR検査を受けたというクラブ勤務の女性を取材すると、こんな声が聞かれた。
「同じビルのラウンジに勤務するホステスがコロナ陽性でした。そのラウンジ内の濃厚接触者は全員検査をして、お店は休業に入ったみたいです。フロアは違いますが、行き来しているお客様も多いので、うちのお店では在籍している従業員80人が全員PCR検査を受けることになりました。濃厚接触者ではないので、80人分の検査費用は全部ママ持ちです。4日に分けて検査をして、全員の陰性が確認できて、安心して年末を迎えられそうですけど…。またいつ感染のリスクに晒されるかわからないので、その度にお店側やママが検査費用を負担するとなると、痛い出費ですよね」
従業員全員のPCR検査にかかった費用は150万円を超えるという。経営状況が悪化の一途をたどる夜の街ではその負担は重く、すべてのホステスが検査を受けられるわけではない。
都内のスナックに勤務する女性はこう話す。
「系列店のお客様でコロナにかかった方がいたみたいで、先週からうちのスナックも休業になりました。お客様向けには、系列の4店舗で働く従業員はPCR検査を受けて『安全が確認できた』と店長が報告をしたみたいですけど、私は『検査を受けて』なんて言われてないし、実際受けたくてもお店からの案内もないんです。年末にお店が休業になっちゃって、いつ再開するのかも未定で給料も心配だし、自費で検査を受ける余裕なんて正直ありません。お店も大変だろうけど、明日から休業ねって言われて、それっきり検査のことも給料や補償のことも連絡がなくて…不安な日々を過ごしています」
陰性が判明したと公表しているにもかかわらず、検査を受けることすらできていない実態を語ってくれたこちらの女性は、コロナ禍で給料が安定しないため、複数の夜の店に出勤しているという。
自治体や店側がPCR検査の費用を持ってくれることもあれば、すべて“自己責任”に委ねられているホステスもいる。「PCR格差」が拡大するなか、“掛け持ちホステス”が増えているとなれば、夜の街で経済活動と感染拡大防止を両立させるのはよけいに困難かもしれない。
(浜野ふみ)
※写真はイメージです