企業が運営するSNSアカウントの炎上騒動が後を絶たない。10月末には大手玩具メーカーが自社の着せ替え人形のプロフィールについて「某小学5年生の女の子の個人情報を暴露します」などと表現し、犯罪を助長する恐れやブランドイメージにそぐわないなどの意見が殺到し、炎上騒動に発展したのは記憶に新しい。謝罪文を掲載するなどの対応を取ったものの、いまだ更新は途絶えたままである。企業SNSの在り方が問われる中、また新たな炎上騒ぎが話題となっている。
11月25日、シャンプーや医薬品などの生活用品で知られるクラシエのTwitterアカウントに批判のコメントが殺到し、謝罪文を掲載する事態に発展した。
事の発端は35年ぶりに新種のゴキブリ2種が発見されたというニュースだ。ゴキブリ用の殺虫剤を製造・販売するアース製薬がこのニュースに反応し、引用する形で「え〜!ゴキブリ2新種発見ってまじですか〜!」「研究部のみなさんにも報告せねば…」などとツイートを投稿。その投稿に返信するように、クラシエは不快感をあらわに「朝から嬉しくないニュースですね…知られてないだけでもっと新種はいるのではないか、とか、ここ10分ほどGさんのことで頭がいっぱいになりました。アースさん、研究よろしくお願いします」と投稿したのだ。
最新のニュースを話題にした企業アカウント同士のなんでもないやり取りのつもりだったのだろう。しかし、いくらゴキブリとはいえ、生物の新発見という科学界の一大ニュースに対し、「朝から嬉しくないニュース」と表現したことがユーザーの反感を買ってしまったようだ。ユーザーからは《研究者の人が見たらどう思うか考えたほうがいいですよ》《新種を発見するのに一生をかける科学者もいるのに…科学や環境のことを何も理解していない会社》などと厳しい批判が殺到する事態に。クラシエはその後、「新しい発見である貴重な研究であること、生物多様性についての理解が不足しておりました」と謝罪のツイートを投稿した。
企業の公式SNSとして配慮に欠ける不適切な発言であったことには間違いないが、今回の炎上には擁護の声も多いようで、《ニュースを見て同じこと思ったし不適切とは思わない》《新種のゴキブリが都会で大繁殖したら怖いでしょ。『嬉しくない』と叩く気持ちもわかる》《ツイッターだしライトな感じでこういうこと書いてしまいがちだけど企業さんだからツッコまれちゃったんだよな…》など、クラシエに同情する声も多くあがっている。
「企業SNS炎上の例を見ると、あからさまな差別的表現などは当然としても、多様性に寛容でないことや現代社会において重視されている認識が少しでも抜けていると“総叩き”にあってしまう傾向にありますね。これは企業に限らないことですが、多くの人が利用しているSNSでは、『これを見て不快に思う人はいないだろうか?』と考えてから投稿するリテラシーを心掛けることが炎上防止の第一歩でしょう。昨今のネット監視社会では、十分に注意したSNS運用を心掛けるべきですね」(情報誌ライター)
一寸の虫にも五分の魂。多様性を尊重するSNS社会も突き詰めれば、ゴキブリにまで配慮しなければならなくなるかもしれない。
(浜野ふみ)