選挙戦でSNSを駆使するのは今や常識だ。7月の都知事選では「石丸効果」で世間を賑わせ、10月の衆院選では国民民主が大躍進、11月の名古屋市長選、兵庫県知事選でも効果は絶大だったとされる。
そんなSNSだが、海の向こうのルーマニアでは、なんと大統領選にまで、多大な影響を及ぼしたという。
「11月24日に大統領選挙の第1回目の投票があったのですが、つい3カ月前まではほとんど無名で泡沫候補と思われていた候補者、カリン・ジョルジェスク氏が、得票率22.94%で首位に立ってしまったのです。政党には属していない無所属で、選挙資金はゼロ。そこでTikTokを活用したようですが、それが一気にフォロワー30万人近くを得てバズった結果でした」(全国紙記者)
ルーマニアではTikTokが大人気で、約1900万人の人口のうち、半数に近い約900万人がTikTok利用者だという。
ところが、このジョルジェスク氏、極右の親ロシア派だったことから疑惑を持たれた。ロシアによる「選挙干渉」があったのではないかというのだ。
「事実、TikTokで配信された応援コンテンツでは、大量の偽アカウントが見つかっています。ルーマニアの通信分野を担う部署がTikTokに照会したものの、同社はすぐに対応することはなかった。憲法裁判所でも再集計を命じる動きがあったのですが、結局は問題なし。ジョルジェスク氏の1位が確定しました」(前出・記者)
本命と見られていたマルチェル・チョラク首相は3位に沈み、翌日には辞任というオマケも付いた。1回目の選挙では50%を越える候補者がいなかったことから、12月8日に決選投票が行われ、ジョルジェスク氏と親欧州路線の野党党首、エレナ・ラスコーニ氏が争うことになる。
「アメリカでは利用禁止法案が成立したように、TikTokは親会社の本国である中国の心理戦の道具と見るムキもある。となれば、もともと東側だったルーマニアの選挙の裏でロシアと中国が結託して、というストーリーも飛び出しているほどです」(前出・記者)
EUも調査に乗り出しているというのだが、果たして真相は…。
(猫間滋)