去る11月29日、オーストラリアで「16歳未満はSNSの使用を禁止する」という法案が可決されたことは日本でも広く報道された。
施行は1年後で、対象となるプラットフォームは、Facebook、Instagram、TikTokなど。YouTubeは健康や教育分野のサービスも含むという理由で除外されている。違反があったIT企業には、最大で5000万豪ドル(約49億円)の罰則が科される可能性があるという厳しい法律だ。
だが、世界には、さらに厳しくSNSの禁止に動き出した国もある。対象はTikTokに限ってはいるものの、南東ヨーローッパのバルカン半島に位置するアルバニアでは、全国民の利用停止を打ち出した。
「現地時間の12月21日に、エディ・ラマ首相が1年間の全国民の利用停止令を発したのです。発端は14歳の男子学生がTikTokでのやり取りが元で友人と揉め、殺人事件を起こしたこと。この事件はSNSを通じて起こったこともあり、すぐさま情報が拡散。中には殺人を擁護する意見も投稿されるなど、国中で大激論となりました。当局は、教師や保護者を交えて善後策を考える会議を1300回も重ねたといいます」(全国紙記者)
首相は、「(TikTokのアルゴリズムは)嫌悪と暴力、仲間外れなど、言語地獄の再生産を助長している」と極めて厳しい調子で非難したとされる。
「アルバニアの人口は約280万人。小国であればあるほど、SNSが国全体に与える影響は看過できないという面があるのでしょう。TikTokに関してはアメリカでも禁止法の是非を巡って訴訟沙汰になっているところですが、11月にあったルーマニアの大統領選挙でもTikTokを通じた不正疑惑が浮上しました。TikTokに限らず、韓国では青少年のSNSの利用制限が検討されたり、ヨーロッパでは規制の動きが広がっていますね」(前出・記者)
SNSの功罪については議論が尽きないが、そのあり方を巡っては、今や世界中に新たな規制の波が押し寄せていると言えそうだ。
(猫間滋)