始発列車が最終列車?「日本一終電が早い駅」に鉄道マニアが殺到するワケ

 鉄道各社が2021年春のダイヤ改正から終電時間の繰り上げを発表、または検討中であることが大きな話題となっている。だが、地方にはそんなのことは無縁と言わんばかりに最終列車の時刻がとんでもなく早い駅もある。

 JR日豊本線の重岡駅(大分県佐伯市)は、大分・宮崎の県境付近の山間部に位置する駅。特急列車は上下線とも1〜2時間に1本と頻繁に走っているが、上り線の普通列車は午前6時47分発(※20年11月現在)の延岡行きの1本だけ。始発が最終列車とは驚愕の一言だが、その終電が朝6時台というのもスゴい。

 ちなみに夕方以降にも重岡駅に停車する上り線の列車は2本あるのだが、いずれも同駅が終着駅。実は、重岡駅自体は山深い場所に位置するが秘境駅などではなく、駅の近くには数十軒の住宅が集まる集落もある。とはいえ、地元住民の多くは普段の移動に車を使っており、通勤の高校生が利用するのも佐伯・大分方面の下りの普通列車。実際、筆者は何度か重岡駅を訪れているが、延岡行きの始発兼最終列車に乗車する者は誰もいなかった。

 1日1本と極端に少ないことから、JRの普通・快速乗り放題の「青春18きっぷ」を使って旅する愛好者にとっては“難所”として有名。この列車に乗るためには前日のうちに始発の佐伯駅周辺に泊まる必要があるが、鉄道マニアの間ではそれだけの価値があるとされている。

 この日本一早い最終列車は、特急用の車両を普通列車として運行させており、車内が豪華でシートの座り心地も抜群なのだ。なお、逆方向の南延岡発佐伯行きの下り線普通列車の始発も同じく特急用の車両を使用しており、夏休みや冬休みシーズンにはわざわざこれらの列車目当てに乗車する者もいる。

 そんな鉄道好きですら重岡駅で下車する者は皆無。列車到着後の朝7時に豊肥本線の三重町という別路線の駅に向かうバスがあるものの、延岡・宮崎方面を目指すなら翌朝まで丸1日待たなければならない。

 日本一終電の早い駅は、鉄道の旅で訪れるには思った以上にハードルの高い駅なのだ。

(写真・文/高島昌俊)

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