新型コロナウイルス禍で揺れた2020年の日本シリーズ(11月21日開幕)は「指名打者」(以下=DH)がポイントとなりそうだ。
今年の日本シリーズはDHを使えるパ・リーグ主催ゲームが3試合だけだ。過去10年のシリーズを逆上ってみると、セ代表チームが日本一になったのは12年の巨人だけ。パ・リーグの7連勝中で、勝因に「DH制」が挙げられている。
「昨年のシリーズ敗退後、巨人・原辰徳監督がセのDH制導入を提唱しました。メジャーリーグではコロナ禍による選手の負担軽減のため、ナショナル・リーグのDH制採用を認めました。21年までの暫定措置ですが、以後、正式導入されるようで、そうなると、NPBもセ・リーグのDH制導入を決めるのでは」(球界関係者)
今年も巨人がシリーズで4連敗するようなことになれば、DH制の導入は早まるかもしれない。
「原監督はDH制により、守備に難がある控え選手にも出場機会が広がるとの意見を示していました」(前出・球界関係者)
たしかに投手が打席に立たない分、野手の先発出場枠は増えるが、一方で、控え選手の出場機会は減少するとの見方が強い。
セ・リーグ147人、パ・リーグ117人。うち20試合以上がセ20人に対し、パは8人しかない。何の数字かというと、代打出場の選手の数だ。セは43試合のヤクルト荒木貴裕を筆頭に多くの野手が途中出場のチャンスをもらっている。それに対し、DH制のパはトップの王柏融こそ32試合に代打出場しているが、代打出場10試合以上は16人。セは10試合以上が48人もいる。
やはり、スタメン落ちした野手、売り出し中の若手が試合中盤以降、投手に代わって代打で出るチャンスが多いのだ。パ・リーグはDH制で強力打線が編成されるためだろう(数字は11月3日時点)。
セ・リーグは投手交代のときのイニングで打順がまわってきたら、自動的に代打投入となる。前向きに捉えれば、野手の出場機会を増やしているとも解釈できる。
「今年の日本シリーズで、巨人が大敗を喫すれば、他のセ5球団もDH制導入論に賛同せざるを得なくなるかもしれません」(ベテラン記者)
日本シリーズの大敗で原巨人の賛同者が増えるとは、皮肉な限り。MLBのDH制定着の影響が日本球界に及ぶのは時間の問題だが、今年の日本シリーズでは「代打の存在感」も見せてもらいたい。
(スポーツライター・飯山満)