「そういえばカジノってどうなってるの?」
そんな声が聞こえてきそうなくらい、とんとカジノの話を聞かなくなった。
それもそのはず。カジノはおろかインバウンドが雲散霧消し、ようやくGoToトラベルで国内の観光需要が戻りかけてきたところ。昨年11月にカジノの基本計画案が提示されるのとほぼ並行して、カジノ汚職で秋元司・衆院議員が逮捕されるというタイミングの悪さもあった。
「そこで日本のカジノ計画は遅れに遅れていたんですが、ようやく国は10月9日にカジノ計画の見直し案を公表。本来は来年の1月から7月いっぱいまでに、自治体と事業者からカジノ計画の受け付けを行うはずだったものが、9カ月を延期した来年の10月から再来年の4月までとしました」(全国紙記者)
ただそんなことは、カジノ誘致を進める自治体にとっては他人の事情。だから、和歌山マリーナシティでの誘致を進めてきた和歌山県の仁坂義信・知事はたいそうオカンムリなのだ。
「国が定めた手続きに従ってやるしかないので、変えられた手続きに沿ってやるしかない」
と、コロナや汚職を受けて新たなルールを設けた見直し案に沿って粛々と手続きを行うとしながらも、
「約束したら、その通りにきちんとやってください。何度も繰り返すようでは困る」
と怒りを露わにし、まるで子どもを叱る親のような口ぶりなのだ。
一方で、最有力地である横浜でも混迷を極めている。世界的なカジノ会社のサンズが既に撤退して計画が暗礁に乗り上げたかのような印象すら受けるところに、地元住民の根強い反対運動も盛り上がってきている。
「カジノの誘致の是非を問う住民投票を行うよう求める署名運動が繰り広げられていますが、住民投票の請求に必要な6万2500人の署名が既に集まったと伝えられました。ただ住民投票の実施は、請求を受けた後に議会の賛成が必要なので署名が集まっただけで行われるものではありませんが、署名の数が多ければ多いほど議会も住民の意向は無視できなくなります」(前出・全国紙記者)
和歌山市は二階俊博・自民党幹事長の地元、横浜市はもちろん菅首相の地元。カジノの趨勢が時の2大権力者の命運を左右しそうな気配なのだ。
(猫間滋)